自作お題小説『色』
(色)赤い口紅
「あなたが好きよ…」
小さく動いた私の唇。
あなたの視線を充分に感じたら…
もう一度動かすの
ゆっくり…
官能的に…
焦らして…
悩殺的に…
「………ぁ。」
あなたが私の唇の数センチ手前で、小さく声を漏らしたら…
後…もうひと越え…
そう…もう一声…
「いいよ…。」
唇の右端を微かに上げて…
私は言うわ…
誘って…
挑発的に…
見据えて…
誘導的に…
ふふ…
ごめんなさいね…
あなたの恋人さん…
私の目の前のこの人は…
今…私しか見えていないわ…
あぁ…
ごめんなさいね…
目の前のあなた…
これって浮気になるのでしょう?
だけど…私は何にも悪くはないわ
だって…
あなたが私に口付けたのよ…
一人で…
自発的に…
勝手に…
能動的に…
私の…
唇に…
そう…
この…真っ赤な口紅に…
終わり