自作お題小説『色』
(色)ダークブルーのオープンカー
広い道路の端。
私は一人立ち尽くして、ボンヤリ流れる車を見ていた。
「!!」
目の前に停まった車に気付いて私は笑顔になる。
「乗って。」
ゆっくり開いた助手席の窓。
中には大好きな人。
私は周りをキョロキョロと見回して、そそくさと車に乗り込む。
だって…
二人は秘密の関係だから…
少し車を走らせて、都心から離れたレストラン。
誰にも会わないように…
誰にも見つからないように…
こんな関係…
いけない事だって判ってる
だけど…
貴方の傍にいたいんです…
「あっ…」
車に乗り込む直前に見た夜空。
「今夜は星が綺麗だね。」
貴方が言う。
厚い雲が一箇所。
煌々と光る月を覆い隠して…
明るいんだけど…暗い…そんな夜
「えっ?」
助手席に乗り込んだ私の真上に、さっきまで見ていた星空が広がっていた。
「折角だから…このまま帰ろうか?」
走り始めたオープンカー。
風になびく髪がくすぐったい。
頬に当たる風が冷たかった。
ねぇ…お願いだから…
もう少しこのままで…
月の見えない夜…
風を切って走るオープンカー…
ダークブルーの車体を…
その闇で隠して…
誰にも見つからないように…
誰にも気付かれないように…
その闇に紛らせて…
終わり