自作お題小説『バカ』
(バカ)バカな事言わないで
どんな事をしても、手に入れたい人がいます
どんな卑怯な手を使ってでも、モノにしたい人がいます
「僕と付き合って下さい。」
人通りの多い廊下。
道行く生徒達が不審そうな目で僕達を見ている。
「え…っと?誰だっけ?」
目の前のあなたは不思議そうな顔で僕を見る。
「一目惚れなんです!」
大声で放った僕の言葉。
「あ〜っと…?一年生だよね?」
チラリと僕の胸の校章を見てあなたは言う。
「僕と付き合って下さい。」
僕はもう一度頭を下げた。
「………ごめんね。君とは付き合えなわ。」
少し間を置いてあなたは言う。
「あなたが好きなんです。」
僕は顔を上げて、あなたの目を見て言った。
「あのねぇ
「あなたの為なら何でも出来ます!」
あなたの言葉を遮って叫んだ。
「何でも?」
「はいっ!」
訝しげに顔を歪めたあなた。
その顔も大好きです。
「じゃぁ、君…私の為に死ねる?」
ニヤリと笑ったあなたの口元。
「喜んで。」
即答した僕に、
あなたの口元、少し上がった口元がスッと下がる。
「バカな事言わないで。」
不快に眉を沈めたあなたの顔。
その顔も大好きです。
「あなたか今ここで死ねと言うのなら、
僕は喜んでこの身をあなたに捧げます。
僕の死があなたの心に、一生残るのなら…
この命…惜しくも何ともないですから。」
にっこり笑った僕を見て、
あなたは青ざめた顔で一歩後退る。
「君……おかしいよ……狂ってる……。」
パタパタと走り去ったあなたの後姿を見て、僕は立ち尽くす。
口元に笑みを浮かべながら。
狂ってる?
そうかもしれないです
あなたが…僕を狂わせた……
あなたの全てが…
僕の全てを……
狂わせた………
終わり
作品名:自作お題小説『バカ』 作家名:雄麒