自作お題小説『バカ』
(バカ)バカでもいいもん
季節外れの大雨。
待ち続けていたあの子。
「お前っ!何してんだよっ!!」
怒鳴り散らした俺の声。
強く引っ張った君の腕。
「遅いよぉ。」
笑いながら言う君。
冷えた体。
「何でこんなになるまで待ってんだよっ!?」
理不尽な怒り。
悪いのは当然俺。
遅れるつもりなんて無かった
部活が長引いて
こんな日に限って、携帯は家に忘れてきた
「だって…来てくれるでしょう?」
俺の一歩後ろを歩く君。
濡れた髪。
「お前って……本っ当に……」
途切れた言葉…バカなんだから……
後に続けた言葉は、さすがに胸の奥にしまった。
「バカでもいいもん。」
後ろからした声。
いつもの笑顔。
以心伝心。
拈華微笑。
「遅くなって……ごめんな…。」
素直に口にした。
「来てくれて……ありがと…。」
その言葉に、俺はつないだ手を強く握り締めた。
終わり
作品名:自作お題小説『バカ』 作家名:雄麒