自作お題小説『バカ』
(バカ)バカじゃない?
「おいっ!いい加減にしろよっ!!」
深夜のマンションの一室。
響く怒鳴り声。
いい加減にして欲しいのは、そっちだわ。
必死な貴方。
冷静な私。
まとめた荷物。
「悪いのはそっちでしょ?
それなのに、私がこうして出て行ってあげるって言ってるのに。
感謝してもらいたいくらいだわ。」
振り払った腕。
懇願する瞳。
「頼むからそんなこと言うなよ。
俺にはお前が必要なんだ。お前だって俺を愛してるんだろう?」
さめた想い。
戻らない感情。
「自惚れないで。
貴方がしたことが許せなくて、こんなことしてるとでも思ってるの?」
驚いた顔。
疑問符の浮かぶ頭。
「バカじゃない?いつまでも昔のままの私じゃないのよ。
貴方への情なんて、当の昔に無くなってしまったわ。」
手に取った荷物。
向けた背中。
「一生さよなら。」
振り返って一言。
冷たく一言。
さよなら…被害者ぶって泣いていた私…
さよなら…自意識過剰に笑ってた貴方…
終わり
作品名:自作お題小説『バカ』 作家名:雄麒