短編小説
蝶
蝶のようにヒラヒラと舞う君に
僕だけじゃなく 全ての人が魅了される
キラキラと振りまかれる君の魅力に
僕だけじゃなく 全ての人が酔いしれる
だから僕は
甘い香りで 甘い言葉で君を誘う
君は躊躇いも無く 僕という花に止まるんだ
「うふふ。大〜好きよ。」
甘い蜜という名の毒を発しているのは
僕なのか……君なのか……
脳が痺れて 思考が定まらないよ
「楽しかったわ。じゃぁまたね。」
一時の甘い時間を過ごして
君はすぐに僕から飛び立っていってしまう
新たな花を探して その羽根を羽ばたかせるんだ
捕らえようとすればするほど 君は離れていく
一つの花に留まらず
自由で……
気ままで……
そして……美しい……
どこへも行けないよう 羽根をもぎ取ってしまえば
君の美しく羽ばたく姿は 二度と見られないだろう
無理やり虫かごに 閉じ込めてしまえば
君は瞬く間に 輝きを失うだろう
蝶のように美しく
蝶のように自由な君を
留めておくことは 誰も出来やしない
この僕でさえ 君を拘束する力はないんだ
それでもいいさ と思う僕は
体中に君を感じて 体中で毒を求めてる
それでもいいから
たまには 僕のところにも来て欲しい
僕の元で 羽根を休めて欲しい
無数の花を愛した蝶を 愛してしまった
浅はかな 一輪の花に
一時の夢を……
甘い毒に 犯された
愚かな 男に
一瞬の幻想を……
終わり