短編小説
ズルい人
ねぇ…気付いてる?
ねぇ…気付いて欲しいの…
『わりぃ…その日仕事なんだ。また今度行こうな。』
そう電話で言ったあなた…
前から約束してたのに…
「でも…仕事じゃ…しょうがないよ…」
私は物わかりのいい娘を演じる。
それに…二人の関係は恋人でもなんでもないんだし……
なのに…わがままなんて言える訳無いじゃない…
そんなの重いでしょ?
『また埋め合わせするからさ。』
そんな電話越しに申し訳無さそうな声で言わないで…
無理にでも逢いたくなっちゃうでしょ?
優しくしないで…
期待しちゃうじゃない……
二人の距離を縮めるのに大切な一言…
あなたの口から聞きたいその二文字は、いつまでも言ってくれないね…
それなら…私から伝えてもいいですか?
そうしたら…あなたは今までと変わらず笑ってくれますか?
「今度お前が行きたいって言ってたとこ、連れてってやるよ。」
その言葉にココロ弾ませては…
「ごめんっ。夜勤入っちゃって…。」
また枕を濡らすの…
ねぇ…気付いてる?
ねぇ…気付いてて…言ってくれないの?
私に見せる笑顔も…
優しさも……
電話越しの声ですら…
憎らしくて……
愛しい………
私の愛したズルい人…
終わり