短編小説
冬の思い出
もうすぐ冬が終わる…
芯まで冷える様な 冷たい風も…
やんわりと眠りを誘う 暖かい風に変わる…
雪が溶けて 春になるころには…
私のココロの棘も 溶けて無くなるのかな?
いつもより少しだけ広く見えるこの部屋が
寒さを増幅させる。
ほんの数時間前まで 暖かかったのに…。
ソファーの上で膝を抱えてみたりする。
「ごめん…。俺と別れてくれ…っ!」
泣きそうな顔で言った彼の言葉。
「…わかった。」
すんなりと出た自分の言葉に
自分でびっくり。
つらい…?
悲しい…?
言われた時も…
ほら…
今だって涙の一つも出てこない…
そうか…
きっとそんなに好きじゃなかったのかも…?
なのに胸の奥の方に 何かが突っ掛かってる感じ。
冷蔵庫の中からビールを取り出す。
一口含むと 口の中に苦味が広がった。
「まっずぅ…。」
飲めもしないビール。
彼が仕事後に飲んでたビール。
頭がぼーっとしてきて…
「… … … …ふぅ…。」
いい感じに回ってきたお酒。
「… …今日は…寒いなぁ… …。」
自分の声がやけに響く。
あぁ…
この涙は… …きっとお酒のせいだろう… …
終わり