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短編小説

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その理由は?


「これプレゼント。」
そう言って俺は君に小さな箱を渡す。

「今日って何かあったっけ?」
君は不思議そうな顔で箱を見つめる。

「何にも無いけど…。」



「今日は疲れてるだろうから、俺が晩御飯作るよ。」
そう言って俺は進んでキッチンに立つ。

「お互い疲れてるじゃない?」
君がキッチンに入ってこようとするから『大丈夫』と言ってソファーに座らせる。

「俺は平気だよ。それよりも…。」



「今日のメニューは秋刀魚です。」
そう言って俺はテーブルに君の大好きな秋刀魚の塩焼きを並べる。

「あれ?魚嫌いじゃなかったっけ?」
君が不安そうな顔で俺を見つめる。

「そんな事ないよ。だったら…。」



「おかえり。」
そう言って俺は笑顔で君を迎え入れる。

「何で怒らないの?」
君は目に涙を溜めて俺を見つめる。

「怒る理由がないから。」
俺は変わらない笑顔で君に告げる。

「理由ならあるじゃないっ!!私浮気したのよ?他の男と会ってたのよ?」
君は声を荒げて泣き崩れた。

「それでもちゃんと戻ってきてくれた。俺の元に帰ってきてくれた。それが嬉しいんだ。」
そう言って俺は君を抱き締める。


「わかんない……わかんないよ……。」
俺の腕の中で君が呟く。

「本当に私のこと好きなの?」
君の問いかけに俺は『もちろん』と答えた。

君は何も言わずに俺の腕を押し返す。

「だったらもっと怒ってよ!他の男の所なんか行くなって叱ってよ!!
 じゃないとわかんないっ!!愛されてるのかわかんないっっ!!
 いくらプレゼントされたって…いくら私に合わせてくれたって…そんなの辛いだけじゃない!!」
君が本当に辛そううに言うから…俺は何も言えなくなってしまう。

「もっと二人でいたかった。二人なら楽しいはずなのに……
 全部一人で背負い込んじゃって…そんな優しさいらないっっ!!」
大声で叫んだ君が部屋を出て行った。

俺はその後を追うこともせず、呆然と閉まる扉を眺めてた。


  だって…しょうがないじゃないか……

「何にも無いけど…。」  君にプレゼントしたかったんだ……

「俺は平気だよ。それよりも…。」  君を大切にしたかったんだ……

「そんな事ないよ。だったら…。」  君の好きなものが食べたかったんだ……


  どんなに辛いことよりも……
  君の笑顔が見たかったから……

  何よりも……
  君の喜んだ顔が見たかったから……


終わり
作品名:短編小説 作家名:雄麒