キャンドルで君が脱ぐ
20分ほどすると、ばっちり化粧をしたルミがドアを開けて出てきた。
高級娼婦から本格的ないい女に変身している。首にはきらりと光るダイアモンドのようなネックレス。そして、いつも愛撫すると嫌がる耳たぶにもダイアモンドの光。
唇のルージュの大人っぽい濃赤が僕をドキリとさせる。
「どう?」
ほらねと言わんばかりに挑発した目でルミは僕を見た。
「すげえ~・・・高そうな女だ」
「なによそれ」
嘘ではなかった。デパートのフロアの販売員のお姉さんとは思えないほど、変身していた。
「変われば変わるもんだ」
僕は濃い化粧をした女は嫌いではない。むしろ好きなほうだ。
妖艶でなまめかしく、それでいて触れば壊れそうな宝石のような女。今まで会った中で一番綺麗だと思った。
「もしかして、それが僕へのプレゼント?」
「ふふっ、こんなもんじゃないわよ。期待してて頂戴・・・」
今までのルミではないようなルミから言われて、ひさしぶりに背中がぞくりとした。
あまりにもルミがいい女だったので、僕はちょっと出てくると言って1階のフロントに向かった。
「どこ行くの」とルミは聞いたが、「うん、ちょっとだけ」とごまかして足早に部屋を出た。
ルミのあの姿に、いくらなんでもこんな平服じゃまずい。
僕はフロントで、結婚式のタキシードを貸してもらうことにした。
ブライダルもやっているホテルだからタキシードの1着や2着ある筈だろう。思惑通り黒のタキシードをレンタルしていた。僕はすぐさまブライダルルームの更衣室で急いで着替えると、14階のルミが待つ部屋に戻った。
「えっ、すご~い」
僕を見たルミの目は輝く。
「お前だけいい女じゃ、俺が惨めだ。借りてきた」
「似合ってるよ。かっこいい~。うちら映画スターじゃん」
がははと笑うルミはいつものルミだった。
作品名:キャンドルで君が脱ぐ 作家名:海野ごはん