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炎の華還り咲く刻

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第6話 芽生え
梅雨が終わりやっと過ごし易い日々が続く。

そして徐々に増してくる夏の蒸し暑さ。



入社して三ヶ月が経った優は、相変わらずぎこちなく仕事をしていた。

ぎこちなくなってしまう理由は他にもあるのだけれど…



あの日の屋上で見た芹那の顔。



(何を思って空を見上げていたんですか?)



本人を前にしてはどうしても聞けない言葉が、優の胸に浮かぶ。



悲しそうに見上げた空。

晴天には似合わない憂鬱な顔。



あの後も芹那の態度は全く変わらなかった。

しかしそれがまた、優には気がかりだった。



どんなに芹那が笑っていようと、

その心の奥に秘めた悲しみが、優には見えてしまっている様だった。





「こらっ!」

背後から急にした声に、優は驚いて振り返る。



「セリ先輩。」



「何ボーッとしてるの?行くよ、外回り。」

「あ…はい。」



優は何とも言えない顔で、芹那の後ろを歩く。





「そういえば、藤原君、車の免許持ってる?」

優を振り返った芹那が足を止めて問いかける。



「え…あ…はい。持ってますけど。」



「そう、じゃぁ今日の外回り運転してもらっていい?

 何件か回らなきゃいけなくて、電車だとめんどくさいのよ。」



芹那は笑いながら、足を進める。



「会社の車ミッションだけど…大丈夫?」

「えぇ、免許は持ってます。乗るのは久しぶりですけど。」



優も笑いながら、足を進めた。



(何だ…普通に話せるじゃないか)





「あれ?じゃぁここまで何で来てるの?電車?」



「いいえ、バイクで来てます。125の小さいやつですけど。」

優は笑いながら言う。



「え!?」

芹那の驚いた声。



「セリ先輩?」



(…ぁ…あの時と同じ顔…)



芹那の顔を見て、優は苦い顔をする。



「ごめん…何でもない、行こう。」

そう言った芹那の背中を見つめる。



無理やり作った笑顔…





(貴女を…そうさせているのは…僕ですか?

          それとも……別の誰かですか?)

 

慌てて芹那の後ろを追いかけて

チクチクし出した胸から、目を逸らした。





(貴女のそんな顔見たくない……

   俺なら…そんな顔…させないのに……)



心のどこかで、声がした……。



続く→

作品名:炎の華還り咲く刻 作家名:雄麒