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炎の華還り咲く刻

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第5話 空へ


それから月日は何事もなく流れていった。

優もある程度仕事を覚えていって、芹那も変わらず毎日を過ごしていた。





(今日は久しぶりに天気がいいな。)

昼休み廊下を歩いていた優が、窓の外を見て思う。



この所梅雨のせいで、雨が続いていた為

今日は本当に久しぶりの晴天だった。



(こんな日は……ね。)

優は心躍らせながら、軽快なリズムで階段を上がる。



屋上に続く扉を開けると、

青い空がいっぱいに広がった。



優は大きく深呼吸をして、タンクにもたれかかった。





カチッとライターを鳴らして、咥えた煙草に火を点ける。



「ふ〜。」

風に乗って流れていく紫煙を目で追って見つけた人影。



(あれ……?)

煙草を咥えたまま、その人影に近づいていく。





「セリ先輩?」

柵から空を見上げていた、芹那を見つけた。



「………。」

空を見つめる芹那の目が、今にも泣き出しそうなのを見て

優は声をかけるのを躊躇った。





「あれ?藤原君?どうしたの?」

優に気付いた芹那は、いつもと変わらなかった。



「や……あの……。」

優は変に焦ってしどろもどろ。



「……藤原君……煙草吸うんだ?」

芹那の問いかけに更に焦った優は、

慌てて携帯灰皿に煙草を押し込んだ。



「いやっ…あの……たまにっス。」

「くすくす、何焦ってるの?」



やんわりと笑った芹那に、優の胸が一瞬脈打った。



「あ……あはは……まだ未成年なんで、怒られるかと思って…焦ったっス。」

頭を掻いて笑った優に、芹那の笑い声が止まる。



「え……?今いくつ?」

「十八っス。高校卒業したばかりっスね。」



それを聞いた芹那から、完全に笑顔がなくなる。



「あぁ……そっか…十八……歳……。」

呟いた芹那の視線が、コンクリートに落ちる。



「セリ先輩?」

不思議そうな声を発した優に、芹那は慌てて顔を上げた。



「えっと……私もう行くね。午後一で外回りに行くから遅刻しないように。」



口調はいつも通りだったが

芹那の瞳の奥に悲しみの色を見つけてしまって、優は居たたまれない気持ちになる。



足早に階段を下りていく芹那の後姿を見送って、優はため息を一つ落とした。



(俺……何かいけない事…したのかな?)



続く→

作品名:炎の華還り咲く刻 作家名:雄麒