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炎の華還り咲く刻

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第3話 幼馴染


慌ててバスに飛び乗った芹那の前から笑い声がする。



「相変わらずだな、芹那。」

細身のスーツを纏い、笑いを堪えている男。



「幸ちゃん。おはよう。」

芹那は笑って、その男に駆け寄った。



細川貴幸。満二十四歳。

芹那の家の向かいに住む幼馴染。

芹那より一つ年上。

大手企業に勤めるエリートサラリーマンだ。





「幸ちゃんこそ珍しいね、バスなんて。」

貴幸の横に立って、芹那が笑う。



「車の調子が悪くてね。」

拗ねたように笑う貴幸を見て、芹那がもう一度笑った。





「あのっ!突然すみませんっ!」

二人の後ろから声がして、振り返ると

有名私立の制服を着た可愛らしい高校生が

真っ赤な顔で立っていた。



「これっ!アドレスですっ!宜しければお返事下さい!!」

貴幸の手に無理やりメモをねじ込んだ女の子は、

停車したバスから、一目散に駆け下りて行った。





「相変わらずだね、幸ちゃんも。」

呆気に取られていた貴幸の後ろで、芹那が笑う。



細身で長身、頭が良くて、スポーツも出来る。

そんな貴幸は、随分前から女の子にもてた。



幼馴染の芹那もずっとそれを見てきていた。



「………はぁ。」

貴幸はため息を漏らしながら、そのメモを乱雑に背広にしまった。



いつまでも笑っている芹那をちらりと盗み見る貴幸。



「何?」

そんな貴幸に気付いて芹那も、貴幸を見た。



「芹那も……相変わらず……か?」

戸惑いながら発した貴幸の問い。



芹那は貴幸から目を逸らして俯いた。





「…ぁ…もう降りなきゃ…。」

丁度乗り換えのバス停に着いて、芹那が慌ててバスを降りていく。



「……ぁ…。」

暗い表情を隠すように降りていった芹那に、貴幸はかける言葉が見つからなかった。





「……はぁ……。」

バスの中に残された貴幸が、人知れずため息を漏らした春の日の朝。



続く→

作品名:炎の華還り咲く刻 作家名:雄麒