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白い日記帳

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第7話 どっちが本命?

ある冬の寒い日。

私達は相変わらず、三人でみっちゃんの家に溜まっていた。

「ゆきちゃん?それ何?」
少し遅れて部屋に入ってきた幸ちゃんの手元を見て問いかける。

幸ちゃんの手には、二・三個プレゼントの様なものがあった。

「家、出る時に渡された。」
「フライングじゃね?」
みっちゃんがケタケタ笑って、箱の一つを掴む。

「フライング?」
幸ちゃんはキョトンとした表情をして、みっちゃんを見つめていた。

そんな幸ちゃんの態度に、私とみっちゃんは唖然とする。

「幸ちゃん、明日はバレンタインデーだよ?
 だからきっとそれ中身チョコだと思う。」

私の言葉に幸ちゃんはたいして興味も示さず
『へー』と言い放った。

幸ちゃんはこの頃から、こうゆうイベント事に興味がなさそうだった。


「何だよー。もてる男はツライねー。」
みっちゃんがからかう様に幸ちゃんを小突く。

「別に……。本当に好きな子からじゃないと意味ないし。」

幸ちゃんの言葉に、私は驚いた。
幸ちゃんにそういう人がいるんだ、と思うと
少し複雑な気持ち。

みっちゃんを横目に見ると、
やっぱりみっちゃんも複雑なのかな?
押し黙ったままだった。


やけに静かになった部屋の中。
妙に居心地が悪くて、私は慌てて声をあげる。

「私も明日チョコ作る。二人にあげるね。」

私の言葉に、二人は驚いて顔を上げた。

暫く続いた沈黙に、
あれ?私可笑しな事言った?と頭で考える。

「芹那に出来るのかよ?」
笑ってそう言ったみっちゃんは、いつも通りだった。

「出来るよー。チョコ溶かして固めるだけでしょ?」

「うわー、愛が無さ過ぎるー。」
「えー?愛情たっぷりよー。
 そんな事言うと、既製品買ってくるよ?」

「嘘だって。芹那が作るなら、何でもいいよ。」

そのみっちゃんの言葉に、ドキッとしたのは…私だけの秘密。

「なぁ?貴幸もそうだろ?」

今まで黙っていた幸ちゃんに、みっちゃんが話しかける。

「食べれる範囲のものなら…。」
ボソッと言った幸ちゃんの言葉。

「ひどーい!幸ちゃんまで。絶対おいしいの作ってくるから!!」

みっちゃんが笑って…
私も笑って……
幸ちゃんも笑ってた………

やっぱり私達は…こうじゃなきゃ……


2月13日

明日はバレンタインデー。
初めてみっちゃんと幸ちゃんに
チョコレートを作ることにした。
絶対おいしいって言わせてやる!!


そして次の日持っていったチョコは
硬くて・いびつで・何とも情けない姿になっていたが
二人は笑って食べてくれた。

この年から、私は毎年二人にチョコレートを渡す事になる。

沢山貰う幸ちゃんの手の中に混ざる、私のチョコ。
幸ちゃんはいつも、私の目の前で食べてくれた。

私の本当の気持ちを隠して渡す、みっちゃんへのチョコ。
何だか少しワクワクして、ドキドキした。


続く→
作品名:白い日記帳 作家名:雄麒