白い日記帳
第29話 炎華舞在日‐ヒノハナマッタアノヒ‐
あれから私達は散々泣いて、
私はいつの間にか眠ってしまっていた。
次に目が覚めると、幸ちゃんの姿は何処にも無くて
私は一人暗い部屋に立ち尽くす。
どのくらい眠ったのだろう?
ふと時計を見ると、22:30。
眠ったのは2・3時間ってとこだろう。
「あと……一時間半……。」
ポツリと呟いた言葉。
あと一時間もすれば、四十九日が終わってしまう。
「本当に……?」
本当に…いっちゃうの?みっちゃん?
それでも……少し前よりも気持ちが落ち着いているのは…
散々泣いたからだろうか?
みっちゃんの気持ちを聞けたからだろうか?
私は徐に上着をはおり、部屋を出た。
「芹那?どこか行くの?」
廊下を歩く私に気付いて、母が部屋から出てくる。
「うん。ちょっと歩いてくる。」
いつもより落ち着いた口調でそう言った私に
母は『ちょっと待ってて』と言ってリビングに向かった。
「お母さん?」
リビングにいる母の後を追って中に入った。
「これ、持って行きなさい。」
そう言って渡されたのは、小さな水筒。
「……??」
「まだ夜は寒いから……中に芹那の好きなはちみつレモン入れたから。」
シンクの中を見たまま言った母の言葉。
「ありがとう、お母さん。」
それだけ言って、リビングのノブに手をかけた。
「芹那。」
母の呼びかけに、私は動きを止めて振り返る。
「ちゃんと帰ってきなさい。ご飯作って待ってるから。」
母は背中を向けたまま言う。
何だか胸の辺りがホンワリと暖かくなって
「お母さん……心配掛けてごめんね……行ってきます。」
ゆっくりとリビングの扉を閉めた。
玄関の外に出ると、ブルリと体が震えた。
(やっぱり……まだ……寒いなぁ)
「…………。」
右手にみっちゃんの家を見て、私は歩き出す。
行く場所は決まってた。
私はゆっくりと歩を進めて行く。
「はぁぁぁ。」
辿り着いた河川敷。
一つ着いた息が白く上がる。
誰もいない土手に一人座って……空を見上げた。
「みっちゃん……花火…キレイだったよね……?」
問いかけは花火のように空に上がって……弾けた。
「また……一緒に……花火…………見たい…ね……?」
震えた声。
みっちゃんに届いていますか?
ジワリと視界がぼやけて……
慌てて俯いた。
今何時だろう?
ふと思って時計を探す。
「あ………。」
ポケットを探った私の手に、コツリと当たる。
徐に取り出した携帯電話。
修学旅行の日から電源は落したままだ。
電源ボタンに手をかけて、長く押した。
暫くして映し出された待ち受け画面。
三人でやったクリスマスパーティの画像。
(去年は……幸ちゃんも最初から参加だったなぁ……)
数ヶ月前の事なのに、遠い過去の様に感じた。
「11時……15分……。」
23:15。右上の表示を見て、呟いた。
あと……45分…………
続く→