白い日記帳
第26話 3月28日
あの日から一ヶ月とちょっと。
私はろくに学校にも行かずに部屋の中で塞ぎこんでいた。
だって……
布団に入っても…眠れないの
ご飯を食べても…得られるのは嘔吐感
フラフラした足取りで机の前に立ち尽くす。
「…………。」
あの日から……
正確には修学旅行の前の日から
置きっ放しの日記帳
そのページが増える事はなく……
ましてや開くことすらなかった……
「だって………書くことが何もないから……。」
みっちゃんがいないのに…
何を書けというの……?
開けば辛くなるのが判ってる
楽しかった思い出は色を失って…
涙に埋もれていく……
「芹那。」
ゆっくりと扉を開けて、母が部屋に入ってくる。
私は何も言わずにその姿を見つめた。
母も何も言わなかった。
そのままベッドに座るよう言われて、素直に腰を下ろす。
「今日ね、何の日か知ってる?」
隣に座った母の言葉。
私は無言で首を横に振った。
母は優しく私の背中を擦りながら言う。
「今日くらいは…みっちゃんにお線香あげに行きなさい。」
その言葉に、私は母を黙って見つめたが
母は何も言わずに立ち上がった。
ベッドに座ったままの私を、
立ち上がった母が包み込むように抱き締めて…部屋を出て行く。
「……お母さん?」
戸惑いを隠せない私は、呆然と母の背中を見つめた。
「芹那……今日は四十九日よ。」
母が背中を向けたまま言った。
「四十九日?」
聞いたことはあったが、意味はよく知らなかった。
「みっちゃんが天国に旅立つ日。」
母の肩が小さく揺れている。
「お母さん。」
私も目頭が熱くなる。
そのまま部屋を出て行った母を、私は何も出来ずに見送った。
続く→