白い日記帳
第23話 芹那帰還
楽しかった修学旅行。
お土産も買ったし、思い出話もたくさんある。
早くみっちゃんに逢いに行こう。
心を躍らせながら家に入る。
部屋に荷物を置きに行こうと右足を階段に掛けた時
「にゃぁ〜」
足元でした声に驚いて、上りかけた足を元に戻した。
「子猫だ。かわいい〜。」
しゃがんで小さな子猫を撫でる。
「お前、何処から来たの?」
抱き上げて頭を撫でてやると、
喉をコロコロ鳴らしながら擦り寄ってくる。
「芹那?帰ってるの?」
リビングから母の声がして、
その場に荷物を置いてリビングに入った。
「お母さん、ただいま。
このコどうしたの?家で飼うの?」
抱きかかえたままの子猫を見せて尋ねる。
「芹那………。」
急に泣き出した母に、私は驚いた。
「お母さん!?どうしたの?」
慌てて駆け寄った。
母は泣きながら私の体をキツク抱き締めてくる。
「お母さ…
「みっちゃんがね……五日前……バイクの事故に遭ったの……。」
私の言葉を遮って話し始めた母の言葉に、私は耳を疑った。
「え……?何言ってるの?」
腕の中の子猫がスルリと抜け出して、急に体中の熱が無くなったように感じた。
「単独事故で……その子猫を避けようとして……転倒したらしいの……。」
痛いくらいに抱き締められて……
「み…みっちゃんは……?みっちゃんは今どこ?
無事なんだよね……?あ……びょ…病院にいるの?」
母は何も言わない。
「ねぇ……みっちゃんは?お母さんっ!!みっちゃんは!?」
無理やり体を引き離して、お母さんの肩を掴んで問い詰める。
それでも母は何も言わずに
私の目線から逃れるように俯いて泣いていた。
「!?」
弾かれたようにリビングを飛び出して、
靴も履かずに玄関を出た。
「おばさんっっっ!!芹那だよっ!!!
開けてっっっ!!みっちゃんいるっ!?」
隣の玄関を叩いて縋る。
「芹ちゃん……。」
中から出てきたおばさんの目は
痛々しいほど赤く腫れ上がっていた。
「み……みっちゃんは?」
震える声で問いかけた。
「芹ちゃん…ごめんね……。」
私の肩で泣き出したおばさんに、足の力が抜けてその場に座り込んでしまう。
「うそ……嘘でしょ……?」
ガタガタ震え出す体に、何とかムチを打って立ち上がる。
壁伝いに勝手を知り尽くした廊下を歩いた。
リビングに隣接した和室。
位牌の前に置かれた小さな箱。
位牌の中でみっちゃんが笑ってた…
「ぁ……あ………。」
小さく声を漏らして、その場に崩れ落ちた。
四つん這いでみっちゃんに近づいて……
小さくなったみっちゃんを抱き締めた……
「……う……ぁ…ぁ……。」
ゴツゴツした箱
温もりを感じない箱
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
私は声をあげて泣いた。
続く→