小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

白い日記帳

INDEX|24ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 

第22話 困惑そして芹那の想い
バイクに跨った貴光は、困惑する頭でバイクを走らせていた。
真夜中の道路はすれ違う車も無くて……

遠くの方から聞こえた水音。

(………今更……しょうもない……)

そう思っても、自然と足が向かってしまった河川敷。


あの日……一昨年の夏……
芹那を後ろに乗せて……この道を走った

手を繋いでて廻った花火大会
人込みの中で呟いた芹那の言葉……

ちゃんと聞こえていたんだ…

照れ臭くて…思わず聞こえなかった振りをしたけど……
俺の耳には…ちゃんと届いていたんだ……

「俺だって……手放したくねぇよ……。」

走行するバイクの上で呟いた言葉は
誰にも届かず、流れる景色に消えた。


花火の帰り道……
背中にしがみ付いた芹那の温もり……

小さく呟いた芹那の言葉は……
エンジンの音にかき消されて聞こえなかったけど……

後でちゃんと聞いておけば……何かが変わっていただろうか?


流れていく景色から漏れる光が
やけに霞んで見えるのは……どうしてだろう?


ボンヤリと走り続けていた貴光が
右から急に飛び出してきた何かに気付いて
慌ててブレーキを引く。

「!?」

耳障りなブレーキ音を響かせながら、
バイクが転倒して、貴光は地面に叩きつけられた。


「いってぇ……。」
体中に痛みが走って、その身を縮込ませる。

思うように体が動かない……
これはヤバクないか?

痛みとは裏腹に、どこか冷静な頭がそんな事を思う。


「……にゃぁ……」
茂みの中から、小さく声を上げた子猫。

おずおずと貴光の傍に近寄ってくる。

「お前だったのか……?」
急に飛び出してきたものの正体。


「平気か?怪我とかしてねぇか?」
貴光は優しく声をかけて、右手を上げる。

「っっ!?」
瞬間走った激痛に顔を歪めて、伸ばした手がその場に落ちる。

「なっさけねぇなぁ……。」
乾いた笑いを漏らした貴光の手に、フワリと触れた猫っ毛。

「にゃ……にゃぁ……」
大きな瞳で貴光を見つめる子猫。

今にも泣き出しそうで……
貴光の脳に過ぎった顔。

子猫は小さな体を摺り寄せて
貴光の腕の中に、その身を丸めた。


「………。」
貴光の腕がジーンと熱くなる。


「お前……暖かいなぁ……。」


呟いて…目を閉じる……

閉じた瞳の中で……芹那が笑ってた………


続く→
作品名:白い日記帳 作家名:雄麒