白い日記帳
第21話 貴光
貴幸から衝撃的な話を聞いた日から丸一日。
そして芹那が帰ってくるまで後五日。
カーテンを開けて、芹那の部屋を見る。
薄いピンクのカーテンが引かれた芹那の部屋。
(いつの間にか…大人になってたんだな……俺達…)
ちょっと前までは、ポップなクマの柄だったそのカーテン。
俺は小さく笑って、机に腰掛けた。
(俺は……どうしたいんだろう?)
ボンヤリとそんな事を思う。
貴幸が芹那に告白するといった時……
俺は何とも言えない気持ちになった。
悲しいとも違う…
悔しいとも違う…
ましてや嬉しいとか…そんな気持ちなんて浮かばなかった。
貴幸が芹那を好きな事…
俺は…気付いてた
今まで貴幸が付き合っていた女の子は
みんな芹那に少しだけ似ていたから……
だから…言えなかった……
小さい頃から…一緒にいた…隣の女の子…
覚束ない足で…いつも俺の後ろを着いてきた…
『みっちゃん』にっこり笑って……
『みっちゃん』目に涙を溜めながら……
いつでも俺の隣にいたいと言わんばかりだった芹那……
一生懸命俺の傍にいようとしていた芹那……
そんな芹那が……
俺はずっと好きだった……
三人とも幸せになれればいい…と
願う俺は愚かなんだろうか?
三人とも傷つかなければいい…と
思う俺は浅はかなんだろうか?
「俺は……どうすればいいんだろう?」
考えても考えても埒が明かないので、
俺はおもむろに立ち上がって、机の上の鍵を手に取った。
「貴光?どこかに行くの?」
リビングからした母さんの声に
『ちょっと走ってくる』
俺はそう答えて、バイクに跨った。
続く→