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白い日記帳

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第19話 告白
芹那が日本を発って二日が経った。
そんな日の昼休み。

『屋上で待ってる』
そんなメモを二組の女の子から受け取った貴光。

一瞬ドキリとしたが、『貴幸君から』その言葉で安心した。

(自分で言いにくればいいのに。)

メモを見ながら首を傾げて、貴光は屋上への階段を上って行く。


「貴幸〜?お〜い。」
屋上の扉を開けて辺りを見回す。

タンクの向こうから立ち込めている紫煙を見つけて、そっと近づいた。

「こらっ!」
貴光の声にさほど驚いた様子を見せずに、貴幸が振り返った。

「貴幸君ってば、不良〜。」
からかい口調で貴光が隣に腰掛ける。

「大丈夫。芹那の前では吸わないから……。」
貴幸が視線を戻しながら言う。

一瞬空気がピタリと止まる。

「芹那はお前の事、優等生だと思ってるからな。」
貴光の言葉に、貴幸は小さく笑って『そうだな』と呟く。

その顔があまりにも見ていられなくて、
貴光は声のトーンを上げる。

「俺にも一本ちょ〜だい。」

貴幸が驚いた顔をするので、
その胸倉からケースを取り出し勝手に拝借。

貴光の手馴れた動作に、貴幸がもう一度笑う。

「お前こそ……やけに手馴れてるじゃないか。」
「そう?」

おどけた顔をした貴光の口から白くなった煙が空に消えていく。

自分の吐き出した煙を追って空を見上げた貴光を、貴幸が見つめる。


「貴光……。」
その声に貴光は、貴幸を振り返る。

貴幸は地面を見つめたままだった。

「貴幸?」
黙り込んだ貴幸を不思議に思って、その名前を呼んだ。


「俺さ……。」
重い口を開いて、貴幸が話し始める。

貴光は黙って貴幸の言葉を待つ。

「…………告白しようと思ってるんだ。」

貴幸の言葉に、貴光の心臓がドキリと音を立てる。

地面から視線を移して見つめてくる貴幸の瞳から目が離せない。

「芹那に……。」
じっと貴光を見つめて、放った言葉。

貴光は何かを言おうと口をあけるが、すぐには声にならない。


「あ………そっか……。がんばれよ。」
やっと出てきた言葉は、心とは裏腹なものだった。


「それだけ……お前には……言っておきたかったから……。」
小さく呟いた貴幸に、呼び出されてここに来た事を思い出した。


「………そっか……そっか……。」
頭が混乱して、何度も同じ言葉が貴光の口から漏れる。

遠くの方で四例の音が聞こえて、貴光は慌てて立ち上がった。


「お……俺そろそろ行くな。次移動なんだわ。」

大きめに声を上げて……
無理やり笑って……

貴幸の返事も聞かずに、貴光は走って行く。


続く→
作品名:白い日記帳 作家名:雄麒