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白い日記帳

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第13話 今年は…
8月13日

明日は花火大会。
今年も浴衣着ようかなぁ?
みっちゃんとゆきちゃんは
浴衣着るのかな?
すごく楽しみ。
そうだ、みっちゃんにりんご飴買ってもらおう。


「おばさん、こんにちは。みっちゃんいる?」
私はみっちゃんのうちの玄関を開けて
みっちゃんのお母さんに話しかける。

「いらっしゃい、芹ちゃん。上にいるわよ。
 今丁度幸ちゃんも来てるから。」
「本当に!?お邪魔しまぁ〜す。」

靴を脱ぎながら駆け出そうとする私を呼び止めて
『これ持っていって』とお盆に乗ったジュースとお菓子を渡された。



「やっほ〜、みっちゃん!ゆきちゃん!」
私は満面の笑顔で、みっちゃんの部屋のドアを開けた。

「おう芹那。」
自分の机に座っているみっちゃん。
みっちゃんのベッドに座っている幸ちゃん。
私は床のテーブルの前に腰掛けた。

テーブルにお盆を置いて、二人に飲み物を渡す。

「ねぇねぇ、明日の花火大会どうする?
 去年みたいに浴衣で行く?」
ウキウキと話し始めた私。

幸ちゃんは私を見ようとしない。

「どうしたの?幸ちゃん?」

黙り込んでいる幸ちゃんを
私はじっと見つめる。


「ごめん…芹那、俺明日は一緒に行けない。」

そう言った幸ちゃんに
私は小さく声を漏らす。

(そっか……彼女さんと行くのかな?)

ついこの間、幸ちゃんに新しい彼女が出来た。
直接聞いた訳じゃないが、
一緒に帰るのを見たので……きっとそう。

「そっか……じゃぁ今年は一緒に行けないね。
 でも、幸ちゃんはいっぱい楽しんできてね。」

幸ちゃんは顔を背けながら、
小さな声で『あぁ。』と返事をした。



その後暫く三人で会話をして。
幸ちゃんが携帯を見て立ち上がった。

「ごめん、俺もう行くわ。」

片手を挙げて部屋を出ようとする幸ちゃんに
みっちゃんは『じゃぁな』と言って
私も慌てて『またね』と手を振った。

(彼女さんと……デートかな?)

なんて思うのは、下世話な話でしょうか?



幸ちゃんが部屋を出て行くのを見送った後
訪れる沈黙。

その沈黙を最初に破ったのは、みっちゃんだった。

「………初めてだな。三人で花火大会行けないの。」
「そうだっけ?」

私は考えるふりをしながら、心の何処かで何かを期待していた。


再び訪れる沈黙。


「明日………。」

ゆっくりとみっちゃんの唇が動く。
私はドキドキしながら、次の言葉を待った。

きっと……みっちゃんなら言ってくれる……
私の期待している何かを……


「一緒に行くか?……花火大会。」


ほらね……やっぱり……

勇気の出ない臆病な私
もう少しだけ…
みっちゃんの優しさに甘えていいですか?

「行く。」
私は満面の笑みで返事をした。

「じゃぁ行きますか?寂しく残りもん同士で。」
みっちゃんは笑いながらそう言ったけど……

私にとっては、残りものなんかじゃなかった

仮に残りものだとしても……
『残りものには福がある』なんだから……

続く→
作品名:白い日記帳 作家名:雄麒