小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

白い日記帳

INDEX|14ページ/33ページ|

次のページ前のページ
 

第12話 みっちゃんの夢



7月24日

夏休み。
せっかく高校になって初めての夏休みなのに
ほとんどみっちゃんとゆきちゃんに会ってない。
ゆきちゃんは相変わらずデートだと思うけど…
みっちゃんは何してるんだろう?
前からふらっと出かけることが多かったけど
夏休みに入ってからは、それがしょっちゅうだ。
あぁ〜みっちゃんに会いたいよぉ。


私はため息をつきながら、窓の外を見つめる。

「はぁ〜つまんなぁ〜い。」
ボンヤリと外を見つめながら、私はあることに気付く。

(あれ……みっちゃん…もしかしてデートとか?)

最初にその疑問が浮かんで、その後にはどんどん嫌な想像が広がる。

みっちゃんだって彼女がいてもおかしくないよね?
何で今まで気付かなかったんだろう?

頭の中でみっちゃんが別の女の人と
楽しそうに笑ってるのを想像して、胸が締め付けられた。


泣き出しそうになる私の涙を止めたのは
玄関の方から聞こえた音。

自転車のスタンドを立てる音に、
私は慌てて階段を駆け下りた。


「みっちゃん!!」
「芹那?どうしたんだよ、そんなに慌てて?」

自転車の鍵をかけていたみっちゃんが驚いて顔を上げた。

「みっちゃん……今日何処行ってたの?」

聞きたい……けど聞きたくない

そんな想いが頭の中を駆け巡って。
一生懸命搾り出した問い。

「え……あぁ……えぇ〜と……。」
みっちゃんは困ったように襟首を掻いて
私から目をそらす。

私の中の不安はどんどん大きくなっていって
目の前が真っ暗になる。

ヤダ……そんなの……ヤダ

今にも泣き出しそうな私に気付いて
みっちゃんが慌てて、私の腕を掴んだ。

そのままみっちゃんの部屋まで駆け上って、
みっちゃんの部屋に入る。

私は何も言えずに、その場で下を向いていた。

「芹那……。」
私の腕を離して、みっちゃんが真剣な顔で話し始めた。

私は固唾を飲んで、みっちゃんを見つめた。

「誰にも言わないって、約束出来るか?」

みっちゃんのその言葉に、私は覚悟を決めた。
みっちゃんが誰を好きでも
私はずっとみっちゃんを好きでいようと思った。

私が頷いたのを確認して、みっちゃんが重たい口を開いた。

「俺……バイトしてんだ。」
「……へ?」

想像と違うみっちゃんの言葉に私は拍子抜けをして
間抜けな声が漏れた。

「うちの学校バイト禁止だろ?
 だけど、どうしても欲しいもんあって
 隣町のガソスタでバイトしてんだよ。」

しどろもどろになりながら言葉を続けるみっちゃんを
私は呆然として見つめた。

「芹那?聞いてるか?」

瞬き一つしない私を不思議に思って
みっちゃんが顔を覗き込んでくる。

「え……あ…そうなんだ。」

さっきまでの不安が一気に吹き飛んで、心底安心した。

「秘密でバイトしてまで欲しいものって何?」

次にはその疑問が浮かんで問いかける。

「ん……バイクだよ。」
「バイク?」

「そう。バイクっつってもスクーターだけどな。」
歯を見せて笑ったみっちゃん。

「………じゃぁ……。」
みっちゃんの笑顔が眩しくて、切なくて、胸が締め付けられる。

「じゃぁ、そのバイクの後ろに……彼女とか……乗せるの?」

私は声が震えていたかもしれない
だけど…聞いとかなければいけない気がした。


「何?ケンカ売ってんの?」

みっちゃんが笑いながら言う。

「え?」
「貴幸ならいざしれず、
 俺なんかの後ろに乗ってくれる女の子なんて、そうそういねぇよ。」

笑いながら言ったみっちゃんの言葉に
『私は乗りたいけどな…』と言えたら…
何かが変わっていただろうか?

「まぁ……そういうことだからさ……。」
みっちゃんが私に背を向けて言う。

「俺のバイクの後ろは、芹那くらいしか乗らねぇよ。」

徐々に声が小さくなっていくみっちゃんに
私は堪らず笑顔になる。


だって……
乗せてくれるってことだよね?

彼女じゃなくても……
乗っていいってことだよね?

だったら……
もう少しこのままでもいいな……何て思った。

続く→
作品名:白い日記帳 作家名:雄麒