壇上のNovelist 2ndシーズン
第25話 煌き 瞬き 恋敵!?(雫)
いつもと変わらぬ練習風景。
実希と休憩中に、くだらない話で盛り上がって……。
「お〜い。皆、集まってくれぃ。」
休憩の合間に、団長の声が響く。
見ると団長の後ろに、すらっと背の高い男の子。
「あれ、誰?」
小声で実希が聞いてくる。
「知らない。新しい人かな?」
「え〜、彼は今日から仮入団の瀬崎連(せざきれん)君だ。
一応演劇の専門学生で、長期休みを利用しての、体験入団みたいなものだ。
だから皆いろいろ教えてやってくれよ。」
ポンと背中を叩いて、一歩前に出された彼に注目する。
「瀬崎連、20歳です。この劇団に入るのが、目標でした。よろしくお願いします。」
大きくお辞儀をした彼に、拍手をする。
「さぁて、そろそろ練習始めるか〜。」
団長の一声で、皆がバラバラと散らばる。
今日の練習も無事に終わって、実希と帰り支度を整える。
「先輩っ。」
後ろから声がして、二人で振り返る。
「あぁ……え〜っと。」
「瀬崎君でしょ?」
名前がうろ覚えだった為、戸惑った私に気付いて
実希が助言してくれる。
「何かあった?」
「お二人が一番年が近そうなので、いろいろ教えてもらおうかと。」
笑顔でそう言う顔は、少し幼さが残る。
「でも…うちらもまだ教えられる様なものじゃないから。」
「教えられる範囲でなら……ねっ?」
「うん。」
実希と目を合わせて頷く。
「じゃぁ、舞台とは全然関係無いんですけど…。」
にっこり笑って、近づいて来る。
「彼氏はいるんですか?」
「「えっ?」」
予想外の問いに、驚いて言葉に詰まる。
「私は……今は…いない…かな?」
実希が戸惑いながらもそう言って……
「戸谷先輩は?」
じっと見つめられる。
「あたしは………。」
(ようちゃんが、あんまり他の人に言うなって言ってたし………)
考え込んでいると、頭をぐしゃっとされる。
「本ちゃんっ!?」
見上げると、手の主は本ちゃんで、
私の頭に手を置いたまま、瀬崎君を見ていた。
「雫ちゃんはあかんよ〜。ごっつ大切な奴がおるからな〜。」
「本ちゃんっっ/////」
真っ赤になって下を向く私と本ちゃんとを交互に見て
瀬崎君は『そうなんですか〜。』と笑ってた。
「それじゃぁ、僕、お先に失礼します。」
ペコリと会釈をして、瀬崎君は部屋を出て行った。
「今……ものすごく、誤解して行かなかった?」
実希がつぶやく。
「せやな……。」
本ちゃんもその後につぶやいた。
「何が?」
私だけ事情が飲み込めないままで、二人を見比べる。
「雫は幸せだね………。」
実希がため息をついて、頭を撫でて来る。
「ホンマやな…。知らぬが仏ってこーゆー事言ぅんやな………。」
本ちゃんもポンポンと叩いて来る。
「もうっ!!それ、子ども扱いっっ!!」
二人の手を払いのける。
「あたし、もう帰るっ。」
「「じゃぁね〜。ほなな〜。」」
振り返って二人を見ると、憐れむ様な目で見てくるから(- _ -#
「バイバイっっ!!」
強く言って部屋を出た。
続く→
作品名:壇上のNovelist 2ndシーズン 作家名:雄麒