壇上のNovelist 2ndシーズン
第23話 ふとした疑問
「おはようございまぁす。」
やっとこの日常に慣れてきて、前と同じ毎日を繰り返す。
「おぉ〜。雫ちゃ〜ん。おはようさん。」
ホールの扉を開くと、本ちゃんが大きく手を振って来る。
「おはようございます。」
今日は早く来すぎたせいか、ホールの中は二・三人しかいなかった。
なので、本ちゃんの隣に腰掛けた。
「なぁ、なぁ。」
台本をめくっていると、本ちゃんが小声で話しかけて来た。
「何ですか?」
「西条とはどぅ?」
「どう……って?」
少し動揺して、言葉がどもる。
ようちゃんから何か聞いたのかな?
昨日もまたご飯…焦がしたっけ……。
あっ。一昨日はコップ割っちゃったし……。
(思い当たる節が多すぎる……(泣))
「もぅ、ちゅーとかしたん?」
そう聞かれて、一瞬思考が停止する。
「………………えっ/////」
遅れて顔が赤くなった。
「何やーーー。もぅしたんかーーー。」
「違っっ/////」
「えっ!?まだなん?」
驚いて見てくる。
「い……一回は……/////」
そう言いかけて、ますます顔が赤くなる。
次の瞬間……フッと頭が冷静になって………
待って……一回はしたけど……
あれって事故のすぐ後だし………
よく思い出すと……
あたしは『好き』って言ったけど………
ようちゃんから『好き』って聞いてない……!?
「本ちゃんっっ!?」
いきなり大声を出した私に、ビックリして目を丸くしている。
「え?何?怒ったん?」
「ようちゃんから、何か聞いてない?」
「何かって?」
「あたしの事どう思ってるかとかっ!!」
必死に問いかける私の目から逃れる様に、本ちゃんの目は宙を仰いでいる。
「それは……ノーコメントで。」
「なんでぇ……。」
力が抜けて、その場に崩れ落ちる。
「そんなん本人から聞いた方がえぇやろ?」
そう言って笑う本ちゃんの顔は、何かを知っている顔で……。
「今日帰ったら、聞いてみぃ?」
「う……うん。頑張る。」
ピピピピピピピ〜♪
パソコンに向かっていた手を止めて、携帯を覗き込む。
「もしもし?」
『よぉ〜っす。』
テンションの高い本山の声………。
「どぅしたん?こないな時間に?」
時計を見ると、夕方の五時を回ったところ。
『今、練習終わってんけど………。』
「さよか?」
呑みの誘いやろか?
『今日はきっと、えぇ事あるで、お前。』
「どぅゆう意味やねん?」
意味がわからず、顔をしかめる。
『ま、えぇから。えぇから。とりあえず、頑張りや〜。』
そう言って一方的に電話を切られた。
「な…何だったんや?」
携帯を見つめて、呆然とする。
がちゃっ
「ただいま〜。ようちゃ〜ん?」
丁度雫が帰って来て、そのまま居間へ向かう。
「おぅ。おかえり〜。」
「あ…あのね……。」
俺の顔を見るなり、じっと見つめて来よる。
「何や?」
雫はもじもじしながら、ちらちら見上げて来る。
「……/////な……何でもないっ。」
いつもと違う態度にハテナマークいっぱいの俺。
「ご……ご飯作るねっ。」
荷物を置いて、キッチンに走って行った。
本山からの電話………
雫の態度………
何となく胸の辺りがモヤモヤして………
「何か……手伝おか?」
キッチンに立っている雫に話しかける。
(何や…俺が悪い事してるみたいやん?)
「あ……じゃぁ、その野菜洗ってもらっていい?」
「おう。」
俺がキッチンに立つんは、久しぶりで………
勝手を使い忘れている自分に苦笑い………。
「ねぇ……。」
鍋を火にかけたまま、話しかけられる。
「ん?」
雫の方を見ても、当の本人は鍋と睨めっこ。
「雫?」
「うおっ!!何や!?」
勢い良く振り向いて、迫って来るから驚いて変な声が出る。
「ようちゃん!!」
真剣に見つめてきた目が、不意に揺れる。
「ど……どうしたん?」
濡れる瞳に焦る。
「…………………き?」
「へ?」
よぉ聞き取れんかった。
「あたしの事……好き?」
………………………
………………………
……………………え?
今……何て言わはりました?この子…………?
「どしたん?急に?」
「だからぁ、あたしの事好き?」
真剣に迫ってくるので、言葉に詰まる。
改めて、んな事聞かれても……
そら好きやけど…………
そんなん口に出せる訳ないやん/////
めっちゃ恥ずいゎ〜〜/////
「ようちゃん………。」
声が震えとんのに気付いて……
「泣くなって……。そないな事、言わんくても判ってるやろ?」
雫は大きく首を振る。
いきなり、こないな事聞いてくる雫を不思議に思いながら、先程の事が甦る。
(…………!?本山か〜〜〜##
あいつまぁた雫に変な事、吹き込みよったな〜##)
「ようちゃん……。」
水分を含んだでっかい目ぇが、俺を見つめ続けとる。
俺はため息を付いて、決心をした。
「……………雫。」
「今から俺が言う事……絶っ対に、本山に言ぅたらあかんで?」
雫の両肩に手を置いて、念を押す。
不思議そうな顔してるから、ちょっと不安やけど……
「お前だけに言ぅんやから、他の人に言ぅたらあかんのんや。判ったか?」
雫が大きく頷いたのを確認して、もう一度ため息を付いた。
「はぁ〜〜〜、よしっ。」
「雫…………。」
「……………?」
「…す………好き………やで………/////」
やっぱ面と向かっては、言われへんくて……
言ぅてる最中に下を向いてしまう。
「……ホントにっ!?」
もう一度言うのは無理やから………
黙って雫を抱き寄せた。
「ようちゃんvvv」
胸の辺りに顔を埋めて、抱きついて来る。
「「……………あっ!?」」
抱き合った二人の目に飛び込んできたのは、鍋から上がる煙………。
慌てて火を止める。
「また失敗しちゃった…vv」
そう言って笑った雫を、可愛ぇぇと思た事は
やっぱり口には出せなくて………
とりあえず……今日の分の腹いせと…焦げた夕飯………
今度、本山に会ぅた時に、キッチリやり返してやるからな!!
続く→
作品名:壇上のNovelist 2ndシーズン 作家名:雄麒