壇上のNovelist 2ndシーズン
第40話 多忙の理由(遥)
雫がバイト日に、本山をいつもの居酒屋に呼び出した。
「どないしてん?」
先に席に着いていた俺に、後から来た本山が開口一番にそう言う。
「………。」
ちらりと本山を見た俺は、
ため息を付きながら、目線をグラスに戻す。
「何や?俺忙しいねんけど……。」
そう言う本山に、とにかく座れと隣の椅子を指差す。
黙ってそれに座った本山が、怪訝そうな顔で見てくる。
「お前…金折に連絡取ってるんか?」
驚いた目をして、顔を赤らめた。
「ゆでだこやん(笑)」
本山に前言われたとおりの言葉を返してやる。
更に顔を赤くした本山に、笑いが込み上げる。
「……っ/////何でいきなりそんな事聞くん?」
「……金折が淋しい言ぅてるで?」
俺は煙草に火を点けながら言った。
「……………雫ちゃんに聞いたん?」
「他に誰が言ぅねんな?」
「………そっか……。」
しゅんとした姿に、俺はまたため息を落とす。
「お前が何の為に必死でバイトしてるんか
知っとるから強くは言われへんけど……
喜ばす前に、悲しませてたら意味ないやろ?」
「………判っとるよ。」
金折が新潟に行ってから二ヵ月半…
金折に内緒で本山はある計画を立てていた
付き合い始めて三ヶ月目の日に
直接会いに行きたいんやて……
意外にロマンチックなとこあるやろ?
そのため…バイト二つも掛け持ちして
金溜めとる……
それ知っとるから……
雫に何聞かれても、言わへんかってん
「判ってるなら、メールの一本でも入れたれや?」
「………でも俺のバイト終わるん、夜遅いし…迷惑やん。」
「………それでも…待ってると思うで?」
「そういうもん?」
「そういうもんや。」
短くなった煙草を揉み消しながら、ニッと笑ってやる。
「……(笑)雫ちゃんもそうなん?」
いきなり話を変えられて、顔が遅れて赤くなる。
「……っ/////今は雫のことは、どーでもいいやろ?」
そんな俺に、本山は少し笑って
次の瞬間、ふっと真剣な顔つきになる。
「ホンマ……西条の言うとおりや……
あぁも…ちっこいと壊してしまいそうや……。」
あまりにも情けない声でそう言うから……
「金折はそんなんちゃうやろ?雫よりはしっかりしとるし。」
そりゃぁ本山から見れば、身長はちっこいかもしれへんけど……
俺が見る限り、160くらいあるやろ?
確かに、細っこいから小さく見えるけど……
「でもな……あぁ見えて、弱いとこあんねん。
口では大丈夫言ぅてるけど…もう少し俺を頼ってくれてもなぁ…。」
そう言った本山の背中が小さく見える。
「やから…会いに行くんやろ?たまには男らしいとこ見せたり。」
「ん…。」
曖昧な返事が返ってくるから……
「辛気臭い顔すなや?来週末には会いに行くんやろ?」
丸まった背中を、バンと叩いてやる。
「いった〜っ!」
少し笑いながら、叩かれた所をおさえてる。
「…………そうやな。とりあえずは…来週がんばらな…。」
「ホンマやで?その日がお前と金折の、初舞台になるんやろ?」
冗談じみた俺の言葉に
本山は『くっさ〜』と笑うから……
もう一発お見舞いしたろか?思たけど……
今日だけは見逃しといたるわ……
続く→
作品名:壇上のNovelist 2ndシーズン 作家名:雄麒