壇上のNovelist 2ndシーズン
第39話 距離(雫)
実希と本ちゃんが付き合ってる事を聞いてから
前以上に実希と電話をする事が多くなった。
お互い相談しあったり…
まぁ私の方は特に問題は起こらないので、ほとんど聞く事が多いけど…
「実希はさ…本ちゃんと離れてて不安にならないの?」
『そりゃぁ不安だよ。
だけどたまに会う時は、ものすごく嬉しくていっつもドキドキ/////』
そう笑う実希が電話越しでも照れているのが判る。
「幸せそう。」
『まぁね。でも雫の方が幸せじゃん?毎日一緒にいれるんだから。』
「そうだけど……。」
『いいなぁ〜vv』
「そういえば本ちゃんとは連絡取ってる?あたしとばっか電話してるけど…。」
『本ちゃんとはもっと遅い時間に電話してるから大丈夫。今頃バイトじゃないのかな?』
近くにいる私ですら知らない事
やっぱり“愛”の力はすごいね(笑)
『そ…それでね。雫に聞きたい事あるんだけど…。』
「何?」
少し言い辛そうに実希は言葉を詰まらせた。
『最近…本ちゃん、変わったこと無い?』
「変わったこと?」
『最近…前よりも遅い時間までバイトしてるみたいだから…。』
「そうなの?劇団の方ではあんまり変わらないかなぁ?」
『そっか…。』
声の大きさで、実希の泣きそうな顔が浮かんできた。
「わかった!後でようちゃんに聞いてみる。」
『ありがとう。』
「いいよ〜v」
「ようちゃ〜ん。」
仕事部屋を覗くと、本棚の前で分厚い本を開いてる。
「ん?どうした?」
眼鏡を外しながら、ようちゃんがこちらを振り向く。
「あ…え〜っと………お茶でもいかが?」
仕事をしているようちゃんに、いきなり聞くのも何かと思い
しどろもどろに理由をつける。
「ほんなら、休憩でもしよかな?」
笑いながら本を閉じて、棚に戻した。
コーヒーを淹れてから、カップを持ってソファーに座る。
「どないしてん?急に?」
コーヒーを一口飲みながら、ようちゃんの問いかけ。
「え〜っと……本ちゃんのことなんだけど…。」
「本山?」
「最近変わったことない?」
少しの間…考え込んで……
「特に変わらんのとちゃうか?
つーか雫の方が会ぅてるやんか。」
「そうなんだけど……。」
期待していた答えが返ってこなくて
カップの中に視線を落とす。
「……………。」
「……………。」
二人の間に沈黙が流れる。
「………あー、その……。」
ようちゃんがカップを置いて、私に向き合う。
「???」
ようちゃんの困ったような顔に、私は首を傾げた。
「その……な……?お前……本山のこと……
おかしいて……いつ気付いたん?」
途切れ途切れに言いにくそう。
「ようちゃん!何か知ってるの?」
私もカップを置いて、ようちゃんを見る。
「あ゛ーー。」
目を逸らしたようちゃんの前に回りこむ。
「ようちゃん!!」
私はようちゃんの前の床に座り込んで、
ソファーに座ったままのようちゃんをじっと見上げる。
そんな私の頭に手を置いたようちゃんが、ぐりくりと撫で回してくる。
ようちゃんの手があったかくて…ほわ〜v
………って違うっっ!!
「ようちゃん!!」
「ったく……。本山も雫に気付かれるなんて、どんだけ判りやすいねん。」
ため息混じりに、また頭を撫でられる。
「違うよ。あたしが気付いたんじゃなくて、実希がそう言ってたから。」
そういった私に、ようちゃんは納得の表情。
「そか…そぅいうことか。」
「……っで?何かあるの?」
ようちゃんは腕を組んで、少し眉間に皺を寄せて考え込んでる。
「うーーん。」
「???」
いつまでも考え込んでるようちゃんに、痺れを切らして膝の上に顎を乗せる。
「……っ/////」
「判った、とりあえずこっち戻り?」
顔を真っ赤にしながら、私を隣に座らせた。
「あんな……これは俺らが手ぇ出していい問題ちゃうねん。
本山には本山の考えがあってやな……。」
「でも……実希は淋しいって言ってたもん。」
ふてくされる私に、更に困った顔をするようちゃん。
「んー。ほんなら金折に、
『この件は俺が全責任を持つから、何も心配せんと待っとき』て伝えてくれや?」
「う゛ー。わかった。」
ちょっと納得が行かないけど……
ようちゃんがそう言うなら……
早速電話をかけようと部屋に行こうとした私を、ようちゃんが呼び止める。
「雫。」
私は振り返ってようちゃんを見る。
「お前も何も心配することないねんで?」
「………うん。」
小さく頷いて、部屋の携帯を取りに行く。
プルルルル♪
『もしもし?雫?』
「今ね……ようちゃんに聞いてみた。」
『え……何だって?』
少し緊張した声。
「何かね……
『この件は俺が全責任を持つから、何も心配せんと待っとき』って……
ごめんね……よくわかんなかった……。」
電話の向こうがシーンとする。
「実希?」
『よしっ!判った。西条さんがそう言うなら
大丈夫だと思う。私、待ってる。』
「あたし……本ちゃんに直接聞いてみようか?」
『ううん。大丈夫。言われたとおり待ってる。
だから、雫も本ちゃんには何も聞かないであげて……?』
「う……うん。わかった。」
実希はそう言うけど……
やっぱり納得はいってなかった……
だけど……
実希が……笑ってるから……いいか?
続く→
作品名:壇上のNovelist 2ndシーズン 作家名:雄麒