壇上のNovelist 2ndシーズン
第21話 眠れぬ夜は…(遥)
あの事故から…一週間…。
やっと傷も治り、久しぶりの自分の家。
治るまで傍にいると言い張っていた雫を、何とかバイトに行かせ…
劇団の方にも顔を出すよう言い聞かせた。
それでも毎日の様に病室に来る。
こんなんじゃぁオチオチ休んでもおれへんな…(笑)
久しぶりの我が家は、何となく懐かしい感じで……
入るんに少し勇気がいった。
ゆっくり玄関の扉を開けると、すぐ目の前に雫の姿……。
「おかえりvvようちゃんvvv」
満面の笑顔に迎え入れてもらって、今度こそ『帰ってきた』と実感した。
「ただいま。」
「何か食べる?お腹減ってる?」
俺の周りをセカセカと動き回っとる雫に、自然と頬が緩む。
「せやなぁ。久しぶりに雫が作ったメシが食いたいゎ。」
そう言うと、張り切ってキッチンに走って行った。
出て来た料理は、美味いんやけど…やっぱり不思議なもんも混ざってて……(笑)
二人で笑いながらも、完食した。
夕飯を食べ終わった後、今日は大事を取って早めに布団に入る。
久しぶりの自分のベッドは、やっぱり嬉しいもんで……
(病院のベッド、固かったからな〜。)
療養中に散々寝とったせいもあって、すぐには寝付けなかった。
「…っ………、……っく。」
もぞもぞと雫が寝返りを打ってるんに気付いて、体を起こした。
「雫?」
小声で呼んでみると、布団が大きく揺れて動きが止まった。
「……ひっく…、……………っ……ぐすっ………。」
少しずつ大きくなる嗚咽で、泣いとる事に気づく。
「雫?」
ベッドから降りようとした時に、ゆっくりと体を起こした雫を見て、動きを止めた。
「どないしてん?」
「……………。」
俺を見つめている瞳からは、涙が溢れ出とって……
心臓を鷲掴みにされた様な感覚に囚われる。
「……ひっく……夜………、寝ると…………
怖い夢………見るの……………。
ようちゃんが……いなくなっちゃって………。
また……一人になって……………。」
途切れ途切れに言って、布団に顔を埋めた。
「雫……。」
俺の声に恐る恐る顔を上げた。
「こっち…。」
俺は自分のベッドをポンと叩く。
枕を抱きかかえたまま、ゆるゆると立ち上がって
近づいてくる雫に、出来るだけの笑顔を向ける。
ベッドの横でオロオロしているから、腕を少し掴んで座らせる。
「一緒に……寝るか?」
そう聞いてやると、小さく頷いた。
先に寝転んだ俺の後を追う様に、布団に潜り込んで来た。
鼻先に当たる、細くて柔らかい髪がくすぐったくて……
それを撫でる様に整えてやる。
ぎゅっと強く抱きついてくる雫に、ドキドキしながらも…
落ち着かせる様に頭を撫でてやる。
「ようちゃん………。」
「ん?」
掠れる様な声で放たれた言葉に、耳を傾ける。
「何処にも……行か……な…い…で……ね………。」
言いながら小さくなっていく声………。
そのすぐ後に、定期的な寝息が聞こえてきて……ホッとした。
眠りに入った雫の顔を覗き込んで見る。
目ぇ…真っ赤やん……………
(俺がいない間……どんだけの夜をこうして過ごしたんやろ………?)
そう思うと、胸がぎゅっと締め付けられた。
続く→
作品名:壇上のNovelist 2ndシーズン 作家名:雄麒