壇上のNovelist 2ndシーズン
第34話 痕(遥)
眠ったままの雫を見て、また拳に力が入る。
さっき目を覚ました雫が、俺に抱き付いて泣いた時、
抱きしめたくなる衝動を必死に堪えた。
何故なら…最初ベッドに寝かせた時…
抱き寄せた俺の体を、引き離すように腕を突き出した。
小さい体がカタカタ震え出して、閉じたままの瞳から涙が出ていた。
「……よ…ぅ…ちゃん?」
布団の中から声がして、慌てて覗き込む。
「雫っ!?」
「ようちゃんvv」
ふにゃっといつも通り笑った顔。
その顔が見る見るうちに青ざめていって、勢い良く起き上がる。
「雫っっ!!」
バタバタと寝室を出て行った雫の後を追う。
ザァァーーッ
風呂場からシャワーの音がして、そっとドアを開ける。
雫は服を着たまま風呂場の床に座り込んで、首元を押さえていた。
「雫………。」
俺の声に肩が大きく揺れて、そのまま泣き崩れた。
俺は流れ続けるシャワーを止めて、丸まった背中を抱きしめる。
腕の中でカタカタと震えだした雫を見て、少し力を緩める。
「雫……俺が怖いか……?」
俺の問いに大きく首を横に振っているが、
体に力が入ったままなのに気付く。
「無理せんでえぇよ。」
ゆっくり体を離そうと、力を緩めると
体の向きを変えて、雫が正面から抱きついてくる。
震えの止まらない雫に、自分の手のやり場に困って宙を仰ぐ。
「……ってして…。」
胸元で何かを呟いた雫の言葉に耳を傾ける。
「ぎゅってして……。ようちゃんの腕で……ぎゅってして。」
そう言われて、やっと雫を抱きしめる。
「ようちゃん……ようちゃんっっ。」
雫は何度も何度も、俺の名前を連呼している。
「雫………。」
体を離して、両手で雫の頬を包む。
「俺がわかるか?」
涙で腫れた目をじっと見て、そう問いかける。
コクンと頷いたのを確認して、唇にキスをする。
「俺は今、雫にキスしたんや。」
言われた雫が、もう一度頷く。
それを確認して、雫の首元に残る赤い痕の上に唇を寄せる。
「ようちゃ……っっ!」
そのままキツめに吸い上げて、痕を残す。
「雫…これは俺が付けた痕や。
せやから…誰にも見せたらあかんで?」
雫は目を丸くして、その痕を押さえている。
「本山にも見せたらあかんのやで?後でめっちゃからかわれるからな。」
大きく頷いた雫の目から、涙が溢れてきた。
「アホやなぁ、何泣いとんねん。」
俺は笑って涙に触れる。
「違うもん。これはシャワーだもん。」
頬を膨らませて、少し笑った雫に
俺はもう一度キスをした。
続く→
作品名:壇上のNovelist 2ndシーズン 作家名:雄麒