壇上のNovelist 2ndシーズン
第30話 反撃開始(瀬)
金折先輩が新潟に発ってから一週間。
もっと楽に近づける様になると思っていたのに…
思っていたよりも、本山先輩のガードがきつい。
(本山先輩も味方に付けとくべきだったな…)
ちっ
小さく舌打ちをした。
「どうしたの?連くん?」
「難しい顔〜。ほら、先輩が聞いてあげるよぉ〜。」
他の先輩は良くしてくれる。
「大丈夫ですよ〜(あんたらじゃ話になんねぇし)」
にこっと笑えば、ころっと騙されてくれる。
裏で何を思っていようが、気付きもしない。
(まぁ…俺も役者の端くれだしね……)
名演技に感服。
大体……西条って男……
どこがいいんだか?
本山先輩の友達って事は、結構年上だし……
『それは雫が決める事やしな。』
あの勝ち誇った笑み。
何度思い返しても腹が立つ。
どれだけ自信あるんだか……
群がる先輩越しに、ちらっと見る。
また……本山先輩と一緒か……
本山先輩のいない時を狙わなきゃ。
それから何日かイライラを持て余しながら……
それでもチャンスは来て………
「本山〜。」
大道具の先輩に呼ばれる声が聞こえた。
何だか話し込んでいるのを、横目に見る。
本山先輩は頷きながら、こちらをちらっと見る。
その視線に気付いて、気付かないフリ。
ホールを出て行った本山先輩の少し後に、俺もホールを出る。
でもこれは引っ掛け。
直に行っても、どうせ門前払いだ。
時間を見計らって、早足でホールに戻る。
「……っはぁっ、戸谷先輩っ!」
息を切らしたフリをして、先輩に近づく。
迫真の演技に『どうしたの?』って血相を変えた戸谷先輩の顔。
「本山先輩が大道具運んでる最中に怪我してっ!!」
「本ちゃんが!?」
ものすごく慌てた先輩が可愛くて……
俺はにやけ出す顔を隠すのに必死。
「こっちですっ!」
誘導する様に、二人でホールを飛び出した。
これでOK――――。
俺の作戦勝ち―――――。
続く→
作品名:壇上のNovelist 2ndシーズン 作家名:雄麒