壇上のNovelist 2ndシーズン
第29話 宣戦布告(遥)
金折が新潟に行く事を、雫に聞いた。
その日から元気の無い雫。
あまりにも目に見えるので、他の理由があるんやないか?と思て
本山に問いただしてみるも、心配するような事もないらしいので……良かったが……
「雫ぅ〜はよしぃ〜。遅れるで〜?」
今日は金折が新潟に発つ日……。
昨日の夜は布団に入っても、寝付けなかったらしく……
眠るまで頭を撫でてやった。
「待ってっ、待って!後ちょっとっ!」
焦りながら、小さぃ箱にリボンをかけている。
「金折にやるんか?」
「うん。お守りと手紙。」
隣に置いてある手紙を、拾い上げていい事を思いつく。
「………………。これでよしっ。」
「ようちゃん?何してんの?」
リボンを整え終えた雫が覗き込んでくる。
「俺からも門出の言葉。」
封筒の右下に、大きめに文字を書いた。
「おお……ねが……成就?」
「大願成就やっ。
自分の持っとるでかぃ夢を成し遂げる。っちゅー事や。
向こうで役者やって、こっち戻ってきたら、お前と同じ舞台に立つんやろ?
その夢を諦めるなちゅー事。」
「ようちゃん……。」
じわっと瞳に涙が溢れてきて……
「泣くなって……。」
照れ隠しに、少し強めに涙を拭ってやる。
「ありがとう。」
「おぅ……。」
駅に付いて、本山達と合流する。
「ほら見ぃ、言ぅたやん。絶対西条も来るって。なっ?」
「本当だ(笑)」
本山と笑いながら話している金折を見て、ほっとする。
(思たよりも元気そうやん。)
「せっかく来た相手に取る態度ちゃうやろ?」
「お見送りご苦労様です(笑)」
「それでえぇ。」
ひとしきり笑って、雫と他の友達と話し始めたので、少し離れて見守る。
さっきの封筒を見せて、俺の方を指差しとる。
身振り手振りで何言ぅてるか、大体わかって笑ってしまう。
「どぉも。」
そう言いながら、俺の視界に見知らぬ男が入る。
「??」
「初めまして。僕、瀬崎連って言います。」
にっこり笑った顔が、妙に作られた感じで……
俺に敵意向けとんのが、丸バレやねんけど………
「初めまして。西条です。」
俺も負けん位の笑顔で返す。
「戸谷先輩って可愛いですよね?」
思た通り…直球でくるか……
「そうやなぁ。」
笑顔を崩す事無く答える。
「西条さんにはもったいないんじゃないですか?」
挑発的な態度にカチンと来るが、俺も大人や……ぐっと堪える。
「そうかもしれんなぁ。せやけど…それは雫が決める事やしな。」
そう言うと、今まで笑顔だった瀬崎の顔に眉間が寄る。
「じ……自信満々なんですね。」
「さぁ〜どうやろな?」
動揺した瀬崎に少し勝った気がして、にやっと笑う。
瀬崎はますます険しい顔をして、皆の所に戻って行った。
「ようちゃ〜ん。」
遠くから雫の声がして、足を進める。
「はいはい。今行きますよ〜。」
そう言った俺に、金折が雫に何かを言って一人で駆け寄って来る。
「西条さん。」
皆と少し離れた所で、二人立ち止まる。
「これ……ありがとうございます。」
封筒を指して微笑む。
「おぅ。」
「私っ絶対自分の夢叶えて、こっち戻って来ます。」
「せやな。」
「だから…………。」
金折は少し言葉を詰まらせて黙り込む。
「だから…それまで雫の事お願いします。」
いつに無く真剣な金折。
雫の事……こんなに想てるんや……
何故か自分の事のように嬉しくなる。
「お前にお願いされんでもわかっとるゎ。」
そう言った後……くすくす笑い声が聞こえる。
「何やっ/////」
「だって……本ちゃんの言った通り(笑)照れると毒舌になるんだもん。」
笑いを堪えながら、涙を拭っている。
「まぁたあいつっ、いらん事言いよって#」
「だけど……そんな西条さんだから…任せられるんです……。」
そう言う目は真剣だった。
「でも……もし……雫を泣かす様な事あったら
新潟からだって…どこからだって、仕返しに来ますから(笑)」
「肝に銘じときます(笑)」
それから金折の乗った電車が、東京駅を離れて行った。
その場に暫く立ち尽くした雫の頭を、ポンポンと叩く。
「帰るで?雫。」
「うん。」
雫の手を取って歩き始める。
「………っ。」
腕にガシッと掴まって、顔を隠す。
「泣いとる場合ちゃうで?
金折も向こうで頑張ってんねや。雫も負けん位頑張らなぁ。」
「うん。」
目を擦って、笑顔。
「そうや、そうや。ずぅっと笑ててくれ。
やないと、俺が金折に仕返しされてまぅゎ。」
冗談交じりで笑う。
「何それ(笑)じゃぁ今度手紙で【ようちゃんが苛める〜。】って書こ〜っと。」
「え゛!?それは勘弁してくれ〜。」
「あははっ。嘘っ。帰ろっ?」
笑って手を握って来た雫の顔が……
やっと100%笑顔になって………一安心。
続く→
作品名:壇上のNovelist 2ndシーズン 作家名:雄麒