壇上のNovelist
第7話 寒空の下で…(雫)
(あぁ… やばい…。どぉしよう…。)
夜も更けて… 深夜0時を回った頃…。
何でこんな事になったんだろう?
(…って自業自得か…。)
この間の舞台に力を入れすぎたせいで、バイトがままならず
収入がゼロに近かった。
塵も積もった家賃滞納が…ついに…。
(はぁ…。)
コンビニの駐車場で、ペタリと座り込む。
まぁ…つまりは追い出された訳なのだけれど…
(何も、こんな寒空の下に放り出さなくても…。)
少し泣きそうなのを堪える。
友達の家や、先輩の家を転々としながら…今に至る。
(おなか減ったな…。)
このまま寝たら、死んじゃうかな…?何て…頭の隅で冷静に考える。
「君、こんなところで何してるの?」
頭上から声がして、見上げる。
(げっ…!警察?)
「え…いや…ちょっと…。」
しどろもどろに逃げ道を探す。
「もしかして家出か?」
腕を掴まれた。
「違いますっ!」
「君、いくつだい?親御さんは君がここにいる事を知っているのか?」
そう言われて涙腺が緩む。
涙は見られたくないから…下を向く。
そのまま黙り込んだ私に、おろおろしながら何か聞いてくる。
「どうする?」
「とりあえず、派出所まで…」
二人の警察官の会話が耳に入ってきて、顔を上げる。
「あっ…『あの〜。』
自分の言いかけた言葉と同時に誰かの声がする。
「はい?」
振り向いた警察官の背中に隠れて、声の主が確認できない。
「えぇ…はい…。そうですか。」
周りの車の音にかき消されて、会話が聞き取りにくい。
「それでは…お願いしますね。」
そう言って、警察の人がパトカーに乗り込んでいった。
(…???)
警察官にお辞儀をしてる人が、パトカーが走り去ったのを確認して振り返る。
「…っ!?西条さんっ!?」
次に会うときは…もっと大きな自分に…
この前ココロに決めたことが、打ちのめされる。
しかも…こんなところ…。
また…助けてもらったんだよね?
「あ…ありが…」
「お前と会うんは、いっつもこないな場面やな?」
お礼を言いかけた私に、失笑する。
「…ごめんなさい…。」
申し訳なくて声が小さくなる。
「で…?何してん?」
「はぁ…。その…。」
「何や?」
「…何でも無いです…。」
こんな事言える訳が無い。
「…もういっぺん警察行くか?」
さらっと言われた言葉に、驚いて焦る。
「やっ!!ダメです!!」
「くくくっ。嘘や、冗談。」
その言葉にとりあえずほっとした。
「んで…?何しとんの?」
「西条さんこそ何してるんですか?」
ビシッ
「痛い…(泣)」
頭上にチョップが下りてきた。
「話を逸らすんやない。」
「…。」
「命の恩人に向かってその態度か?」
命の恩人って… 確かにそうかもだけど…
「俺がたまたま飯買いに来た時やったから良かったんやで?」
(ごはん…?)
きゅるるる〜
そう思ったら、お腹が減っていたのを思い出して、お腹の虫が鳴った。
「あははっ!腹は正直やなぁ(笑)」
大笑いしながら、 『ちょっと待っとき』と言ってコンビニに入って行った。
「ほれ、食い。」
温かい肉まんを渡されて…
「…ありがとうございます。」
少しためらったけど…空腹には耐えられず受け取った。
食べてる間…隣で煙草を吸っていた西条さん。
ちらりと横目で見ながら…(どうしよう?)考えても答えは見つからず…。
「家出か?」
不意に聞かれて、ドキッとする。
確かにちょこっと外出の割には、荷物が大きいから分かる人には分かると思うけど…
「違います…。」
「なら…どうしたん?」
ここまでしてもらって、何も言わないのは流石に…。
そう思いながらも、なかなか話を切り出せない。
「帰れないんです。」
それでもやっとの思いで、そうつぶやいた。
「は?」
「正確には、帰るところが無いんです。家追い出されちゃって…。」
「親にか?」
あぁ…もうみんな何かあると、親・親って…。
確かに未成年だけど…。
下を向いて首を横に振る。
「と…とりあえず、俺ん家来い。寒いやろ?」
「え…?でも…。」
「俺が寒いねん。はよしぃ。」
半ば強引に荷物を奪われ…
慌ててその背中を追う。
続く→
作品名:壇上のNovelist 作家名:雄麒