壇上のNovelist
第5話 能力<努力<結果
期日通りに仕事を終えて、出来立ての台本を持って劇団へ向かう。
「おぉ〜。西条〜。そっちはどうや?」
劇場に入るとすぐに本山と会って、調子を聞かれる。
「誰に言うてんねん?終わってるに決まってるやろ。」
自信満々に答えた。
「ホンマか?助かるゎ〜。役者の方もだんだん不安になって、イライラしとんねん。」
「ほんならもうちょいはやく持ってくれば良かったな。」
「いやっ。西条が悪い訳やないで。むしろお前がいてくれんかったら
俺ら絶望的やったし…。ホンマありがとぅ。」
改めて礼を言われると、むずがゆい…/////
「お…俺、団長んとこ行ってくるな。」
それは向こうも同じらしく、台本を受け取って走って行った。
ザワザワ
最近…役者(というより劇団の空気その物)の雰囲気が良くない。
まだ見ぬ台本…
迫ってくる公演日…
不安と焦りでいっぱいだった。
「おぅ。みんな集まってくれ。」
団長の一声で、ホールの真ん中に集まった。
「出来上がった台本だ。」
そう言って一人一人に台本のコピーを渡した。
「時間は少ないが、お前達なら出来る!
早速各自、自分の役の確認をしてくれ。」
全員が散らばって、確認に移る。
「雫っ!!」
同期の金折 実希(かなおり みき)がパタパタと駆け寄ってくる。
「何?」
「あんた、役あるよっ!!少しだけどっっ。」
読んでる途中を飛ばして、指定されたページを開く。
「ど…どうしよう…。」
本当にちょい役だけど、セリフがある。。。
「すっごいよっ!ねぇ!?頑張ってね!」
自分の事の様に喜んでくれる実希を見ているだけで…
実感が湧いて来ない。
「ちょっと!!」
後ろから声をかけられて、二人同時に振り向く。
「あんた…西条さんに色目使ったんじゃないの?」
怖い顔で睨み付けてくる先輩。
胸のどこかがざわざわして、いても立ってもいられなくなる。
バタンッッ
「雫っっ!?」
その場から走り去って、真っ先に向かう。
「…っ。はぁっ…はっ。」
開いたドアの先に、ゆったりと座っている…。
「何や?」
「あたし…出来ません。」
震える声で、やっと搾り出した。
「…自分に自信がないんか?」
少し黙り込んで、そう問いかけられる。
「…。」
何も言えなくて…
「ほんなら、お前がやってる事は無駄な事なんか?
毎晩練習が終わってからも筋トレして…発生して…。」
「何で…知って…/////」
顔を上げると、真剣な目で見つめられる。
「俺は自分のシナリオに自信持っとる。
どんなに小さいもんでも、1本1本が俺の全てや。
もしお前が中途半端な気持ちでやるんやったら、こっちもいい迷惑や。
降りるんも好きにしたらええ。」
堪えていた涙が目に溜まる。
「せやけど…これは俺がこの目で、役者見て判断した結果や。
能力のある奴だけが、上に上がれるんやない。努力した奴が、努力した分だけ上がれるんや。」
溜まった涙が落ちる…
見ていてくれた事…
認めてくれた事…
いろんなものが、救われた気がした…
続く→
作品名:壇上のNovelist 作家名:雄麒