壇上のNovelist
第18話 いざ、行かん!初外泊!?(雫)
ガタン ガタン
今は朝の10:00。
私達は温泉に向かう電車に乗っています。
昨日ようちゃんに『どこ行きたい?』って聞かれて…
真っ先に思いついたのは、『遊園地』だった…
こんな事言うと、また『ガキやな〜』って笑われるから…。
それもあるけど…
何より…ようちゃんも楽しめる所に行きたかった。
住み始めて二ヶ月位経った頃に、初めて一緒に外出して…
『人込みはあんま好かん』と言っていたので…
遊園地じゃぁ、余計に疲れるんだろうな…と考えた。
「どぅしたん?急に黙りこくって?」
向かいに座るようちゃんが聞いてくる。
「え…?あ…、向こうに着いて何しようかなぁ〜って。」
「アホやな。温泉なんやから、温泉は入るに決まってるやろ?」
そう言って笑うようちゃんの顔…。
何故かほっとする。
あたし達って… 周りから見たらどう見えるのかな?
恋人…?…/////
考えて赤くなる。
…友達?…にしては年が離れてるかな?
じゃぁ…
その先を考えようとしてやめた。
ちらっとようちゃんの顔を見る。
「ん?」
視線に気づいて笑ってくれる。
それだけで…十分…
(恋人じゃなくても…一緒にいられれば…。)
私も笑顔を返す。
駅を降りて少し歩いて、宿に到着した。
「はぁ〜。疲れたぁ〜。」
部屋に通されて、荷物を置いてくつろぐ。
「どっか行くか?」
「うんv」
荷物を置いて散歩に出る事にした。
やっぱり周りには何も無くて…
住宅街と… 少し離れた所にコンビニが一軒。
小さい公園があったので、そこで一休み。
「あぁー、平和やなぁ。」
ベンチに座って伸びをしている。
「あっ。あたし、さっきのコンビニで何か買ってくる。」
少し喉が渇いたので、そう言って立ち上がる。
「じゃぁ、俺も…行…。」
「大丈夫。ようちゃんはここで待ってて。お茶でいい?」
言葉を遮って、座っててと促す。
「ん…。じゃぁ、頼むゎ。」
日差しがポカポカしてるせいか、ようちゃんもちょこっと眠そう。
心底平和だなぁ…と思う。
コンビニでお茶を買って、店を出た。
(…あれ…?)
公園に向かってるはずなのに、終点が見えなくて…
改めて回りを見てみると、自分がどっちから来たのかすらもわからなくなってた。
(どうしよう…。あっ!携帯!!)
思い出して、鞄やポケットを探す。
(あぁ…。宿の机の上だぁ〜。)
ガックリしてその場にしゃがみこんだ。
(ようちゃん…)
涙が滲んで来る。
こんな事してられないっ!と思い切って立ち上がると、目の前の何かにぶつかる。
「きゃっ!!」
反動で倒れこんでしまう。
「大丈夫?」
見上げると、若い男の人が二人。
差し伸べられた手を借りずに、立ち上がった。
「ごめんなさい。」
とりあえず謝って、その場を去ろうと背を向けた。
「迷ったの?」
腕を掴まれてそう聞かれる。
「だ…大丈夫です。離してくださいっ!」
必死で振り払おうとするけど、力では勝てない。
「俺らこの辺り詳しいから、案内してあげるよv」
屈んで覗き込む仕草に、カチンとして言葉が強くなってしまう。
「結構ですっっ!!」
「何だよ?!その態度。ちょっと可愛いからって!!」
掴まれていた腕に力を込められる。
「痛っ!」
抑えられた腕を引き離そうとしている所で、ようちゃんの声がした気がした。
「雫っ!!」
今度はハッキリ聞こえて、通りの反対を見る。
「ようちゃんっ!!」
バッと振り払って、ようちゃんに駆け寄る。
「バカッ!!来んなっ!!!!」
その言葉が聞こえた時には、すでに遅く…
右から急ブレーキの音が聞こえた。
ようちゃんの驚いた顔…
近づいてくる車…
全てがスローモーションの様に感じる。
キィィィィィィッッッ ドンッ
鈍い音が聞こえて、目を閉じる。
(あれ…?あたし… …?)
両肘がヒリヒリして、恐る恐る目を開けた。
目の前に…
道路から少し外れた車…
その横に倒れている人を見て、唖然とする。
「…えっ?何で…?」
気が動転して、体がガクガクと震え出す。
鈍い音…
突き飛ばされた感覚…
「よ…う… …ちゃ… …ん…?」
足に力が入らなくて、四つんばいでようちゃんの元に行く。
「よう…ちゃん?ようちゃん!!」
体の震えが止まらなくて、ようちゃん抱きしめる。
「…ぅ…。」
膝の上で声がして…
「ようちゃん!?」
思い出した様に涙が出てくる。
「…あぁ…。もぅ…相変…わらず…『ど…ん』…や…な…。」
途切れ途切れにそう言って、意識を失った。
「ようちゃん!?ようちゃんっっ!?
…やだっ!!やだぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!!!」
続く→
作品名:壇上のNovelist 作家名:雄麒