壇上のNovelist
第15話 誤解 奇怪 プチ戦い(雫)
てくてくと、劇場までの道を歩く。
公演も中盤に差し掛かってきて…
今日は午後の公演のみなので、少し遅めの入り。
起きたら、ようちゃんの姿は無くて…
今日外で仕事だっけ?
なんて寝ぼけた頭で考えた。
この間やっともらった、合鍵でロックをして家を出た。
平日なのに人通りがやけに多くて…
人とぶつかりそうになるのを避ける。
(あっ!)
パッと顔を上げたら、通りの反対にようちゃんの姿を見つけた。
「ようちゃ〜…。」
声をかけようとした言葉が、ようちゃんの隣にいる人を見て止まる。
すらっと背の高い女の人…
スーツが良く似合って、綺麗な人…
胸の辺りがムカムカして、歩き出す。
(そりゃぁ、一緒に住んでるけど…好きって言われた事ないし…恋人っぽい事もしてない…)
でも、恋人がいるなんて聞いて無い。
(じゃあ何?あたしは?子供だと思って…ペットか何か?)
考え出してもキリは無くて…
今日の舞台に集中するために、考えるのを止めた。
結局今日の公演の間中、イライラが収まらなくて…台詞に力が入る。
叫ぶ台詞が、リアルっぽいと評判がいいのが、せめてもの救いだった。
何となく早く帰りたくなくて…ゆっくりと家路に着く。
ガチャッ
(帰って来てない…)
閉まったままの扉に、鍵を差し込んで回す。
中に入って靴を脱ぐのと同時に、閉めたばかりの扉が開く。
「おぉ。何や?今帰りか?」
目の前の私にびっくりしている。
「…。」
私はプイッと無言で部屋に入った。
「何怒っとんねん?」
後に続いて部屋に入って来る。
「怒ってないもん。」
上着を脱がずに座り込んだ。
「あっ。せや…」
ジャケットを脱ぎながら、話し出す。
「今日街におったやろ?手ぇ振ったのに、お前気ぃつかんかってん。」
「…。」
それでも黙ったままの私を見て、眉間に皺を寄せた。
「何やねんな?」
ため息混じりにそう言われて、今まで我慢していたものが爆発する。
「じゃぁ、あそこで会って何て言うんですか!?今半同棲してます。なんて言えるんですか?そんなの…西条さんは良くても… …彼女さんが納得出来ないじゃないですかっっ!!」
溜まっていたモノを吐き出して、少しスッキリ。
頭の隅で、『あ…今、西条さんって呼んだ。』何て冷静に考える。
「彼女さん?」
余計に眉間に皺を寄せて、見てくる。
自分がイライラしてるからって、ようちゃんに当たっている自分が情けなくて…
涙が出そうになる。
「ヴー。」
背中を向けてぬいぐるみを抱きしめる。
ようちゃんに買ってもらったペンギン…
暫くして後ろから笑い声が聞こえてくる。
またムカッとして、振り返る。
「くくくっ(笑)お前、俺ん事大好きやろ?」
お腹を抱えて笑う姿に、一瞬頭に血が昇りかけたけど…
冷静になって考える。
「そんなの…わかんない。」
「ま、えぇゎ。誤解しとるみたいやから、言うたるけど
今日一緒におった人、テレビ局のプロデューサーやで?」
「え?」
「今、今秋のドラマのシナリオ書いてんねん。」
笑いを堪えながら、必死に涙をぬぐっている。
「…/////」
ヤバイ…っっ
めちゃくちゃ恥ずかしい〜/////
「ようちゃん…。ごめんね?」
そう言う私を見て、また大笑いするようちゃん…(汗)
続く→
作品名:壇上のNovelist 作家名:雄麒