壇上のNovelist
第12話 初めての…
あの後…。
真っ直ぐ家に帰るのかと思いきや…連れて来られた先は、一軒の居酒屋。
飄々と中に入ろうとしている腕を掴む。
「あほっ。お前未成年やろ?」
自分の過去を棚に上げてこんな事言うんも、どうかと思うけど…
やっぱ大人として言わなあかんやろ?
「大丈夫です。今日はあたしの誕生日なんで、今日から二十歳なんです。」
「そうなん?」
「はいっ。だからもう大人です。」
そう笑った顔がガキやな…と思った事は心にしまう。
中に入って適当に注文する。
「ところで…何で、飲み屋?」
品を待っている間に、疑問に思っていた事を口に出した。
「あのね…。実希が…あっ実希わかりますか?」
「金折やろ?一応一通りは覚えてるゎ。」
まぁ…しょっちゅうこいつの傍におったから
嫌でも覚えざるを得なかっただけやけど…
「その実希が、こないだ二十歳になったんですけど…
お祝に飲みに連れてってもらったって言ってたから…。」
「彼氏にか?」
「うぅん。お父さんに。」
おとん…って…。
『なら自分のおとんに連れてってもらえや?』
という言葉を慌てて飲み込む。
「ほんなら何で俺なん?別に劇団の人でもえぇんちゃう?本山とか…?」
「あたしは西条さんと来たかったんですっ!」
強く言い切った言葉に深い意味は無いんやろな…
と思いながらも、何となく照れる。
「西条さん?」
覗き込まれるのを避けようと思てたところで、丁度良くビールが来た。
「おっ。来たで?」
「やったv何かドキドキします。」
ジョッキを両手に掴む。
「ほな…乾〜杯。」
「かんぱ〜い。」
声の大きさとは裏腹に、ちびっと口に含んで眉間に皺を寄せる。
「ヴー。苦ぁ〜い。」
「これが大人の味やで?」
笑いながら、俺もビールを口に運ぶ。
「ヴー。西条さぁん。」
ビールを俺に差し出して、イヤイヤと顔を横に振る。
「ぷっ(笑)ほな、甘いのにしとき。」
ビールを受け取って、別のものを注文した。
注文した品が続々と運ばれて来て、酒も進む。
ピッチが早ぃのが、気になってはいたが…
段々呂律が回らない感じになって来たので、さすがに止める。
「お前、もぅ止めときっ!」
持っていたグラスを奪う。
「なんれ〜☆まら飲めるぅ〜☆」
奪い返される前に、店を出た。
やっとの思いで、家に辿り着く。
帰りの道中…騒ぐゎ…笑うゎ…ホンマ、いぃ迷惑や…
「はぁいvたらいま〜☆」
玄関のドアを開けて、ズカズカと部屋に入る。
「わっ!あほっ!!靴脱げてっっ!!!」
ガタタッ
土足のまま入ろうとしたので、腕を掴んで止める…
…が!勢い余って倒れこんでしまう。
「いてて…。」
何とか自分の体を支えていた腕の下で、じっと見上げられる。
「…/////ご…ごめん…/////」
慌てて立ち上がった。
「さいじょぉさん、へんなかお〜☆きゃははっ☆☆」
笑いながら靴を脱ぎ捨てて、部屋に入って行く。
後から部屋に入ると、まんまの格好で俺のベッドに眠っとる姿が目に入る。
「おぃっ!お前はあっちやっ!!…って無理か…。」
既に寝息を立てているのを見て、肩を落す。
(二度とこいつとは飲まん##)
というか、飲ません!!
こんなベロベロになったら、危ないやんけっ!?
只でさえ『鈍』やのに…。
翌朝ーーーーー。
「ヴー(-?-)」
頭がズキズキして、目を覚ます。
重い目蓋を無理やりこじ開けた。
「え?えっ?何で?」
上半身を起こすと、隣で眠っていた西条さんに気づいて、気が動転する。
おろおろとその場から動けずにいたら、布団の中に引き込まれる感覚。
「わっ!?」
「ん〜。まだ早いやろ…もぅちょい…寝よーや…」
寝ぼけまなこに言って、すぐに寝息を立て始めた。
「…/////」
顔が熱くなるのに気づいて、勢い良く布団を飛び出す。
「え/////えっ!?何でドキドキ?」
心臓の音が大きく聞こえて、また顔が赤くなる。
続く→
作品名:壇上のNovelist 作家名:雄麒