壇上のNovelist
第10話 ハイテンションの理由(遥)
がちゃっ
「西条さ〜ん。」
勢いよく玄関の扉が開く。
「なっ!!びびったぁ!何や?」
仕事していた手を止めて振り返る。
隣で怪しい笑い方をしている。
「何やねん…?きもいで?」
不審な目で見る。
「うふふv」
そんな俺の目も気にならないのか、テンションは上がる一方。
「何やの?」
仕事用のテーブルから居間へ移動する。
俺に合わせて、隣に座った。
「うふふ。次の公演が決まったんですっ!!」
そう言えば…今日出る前にそんな事言っとったな…と思い出す。
「今回は半年かけての、大規模ですよっ!!」
いらん身振り手振りを付けて、説明しとる…。
「で?」
この笑顔を見れば何となく分かってはいたけど、聞いてやる。
「聞いてびっくりですよっ!!今日台本ももらって来たんですけど、あたしまた台詞があるんです!!
し・か・もぉ〜!前よりたくさんっっ!!」
興奮気味に話し続ける。
「読みたいですか?」
そう聞きながら、すでに鞄を開けとるやん…
「別に…。」
何となく先の予想はついとったが、そう言ってみる。
「はいっ!どぉぞv」
嬉々として台本を渡された。
(やっぱり…聞いとらんな…)
半ば諦め気味に受け取った台本をめくる。
(まぁ…見たかったし…。)
そう思いながら、読み始めた。
「ほらっ!これっ!!あたしですよ〜vvあたし!!」
横から覗き込むように見ていて、あるページに来たところで台詞を指差す。
「あぁ!!もぅっ!分かっとるゎ!ちっと静かにしとれっ!!」
そう言うと、しゅんっと小さくなる(笑)
静かになったので、再び読み始めて…
最初のうちは周りをちょろちょろしとったけど…
飽きたのか…俺の後ろでちょこんと座り込んだ。
背中に少し重みを感じて、背もたれにされとる事に気づく。
(ま…えぇか…)
「なかなか、おもろかっ…」
言いかけて話しかけた相手が、眠りに入ってる事に気づく。
「しゃーないなぁ…。」
一つため息を付いて、そっと抱き上げる。
起こさない様に布団に寝かせて、眠り続ける顔を見た。
「あんま無理すんなや…。」
小さく呟いて、電気を消した。
続く→
作品名:壇上のNovelist 作家名:雄麒