Happy Suggestion
第5話 脅迫
(あれ……?あれ?)
ヒロキから逃げるように別れて、
あのまま脇目も振らず、家に帰って来た。
鞄を開けると、定期入れが入っていない事に気付いた。
「何処で…落としたんだろう?」
少し考えて、嫌な予感が走る。
(まさか………?)
PIPIPIPIPIPIPIPI~♪
鞄の中の携帯の音。
ディスプレイには名前を告げぬ、見知らぬ番号。
(出来れば…二度と会いたく無い……)
そう思っても………
一度狂った歯車は……そう簡単には元には戻らない………
「もしもし………。」
恐る恐る電話に出る。
『もしもし。分かるだろ?俺。さっきはどぉも。
今時定期入れに、ケーバンとメアドのメモ入ってる奴いねぇだろ(笑)
ま、おかげでこっちはラッキーだけどね…。』
電話の向こうで笑い声が聞こえる。
目頭がまた熱くなって来て、言葉が出ない。
『明日さぁ~、店休みなんだよね~。水曜日。
家まで取りに来てくんない?』
それが当たり前だろ?と言わんばかりの声。
「……ゆ…裕くんに渡しといて下さい……。」
必死で冷静を保ちながら告げる。
『あぁ、そう。分かった。』
予想に反した答えに戸惑いながらも、胸を撫で下ろす。
『でもな~、何で俺が持ってるか、聞かれるんだろうなぁ~。
あ~。申し訳ないけど、俺…口軽いからな~。』
「脅迫ですか?」
『どう取ってもらっても………。』
その言葉を聞いて、涙が込み上げる。
「………っ。」
『くくくっ。じゃぁ…明日な……。』
一方的に切られた電話………
その後に地図らしきものが、メールで送られてきた……
ガタッッ
思い切り携帯を投げつける。
何で……こんな事に………
裕くん………ごめんなさい………
続く→
作品名:Happy Suggestion 作家名:雄麒