Happy Suggestion
第4話 夜中の再会
今日の仕事は久しぶりに飲んだ。
いつも飲んではいるのだが、こんなにフラッとするのは久しぶりだった。
だから………全ては酒のせい………
こんなにテンションが高いのも……
常連でも無い客と、アフターを共にするのも………
そう………全ては酒のせい………
「じゃぁ…気を付けて。」
いつもの笑顔で、本名すら知らない様な女の手を取って、タクシーに乗せる。
「今日はありがと、ヒロキvvまた指名するわvv」
うっとりとした目で見つめて来る女に、ヒロキはまた嘘を付く。
「俺も楽しかったよ。また来てね。待ってるから。」
タクシーが先の角を曲がったのを確認して、ヒロキは帰途に就く。
振り返った先のコンビニから、どこかで見た顔が出てくる。
「あっ。」
裕人の彼女か~。
向こうも気付いたみたいで、軽く会釈をしてきた。
「どぉも~こんな遅くに買い物ですか~?」
いつもの笑顔で近づく。
「え…まぁ。」
その顔から、警戒しているのが手に取る様にわかる。
「ヒロキ~vvv」
後ろから別の誰かの声がして振り返る。
「どぉも~。」
店の常連だ。
「どうしたの~?こんな所で?珍しいじゃない?」
「ん~まぁちょっとね。」
彼女はちらっと桜花を見て、小さく笑った。
「ま・いいわ。今日はちょっと急いでるから、また今度ね~vv」
ちゅっと音を立てて、キスをして去って行った。
「お客さんですか?」
沈黙に耐えかねた桜花が質問する。
「まぁね。」
「誰とでも…あんな事……?」
そこまで言って、言葉を詰まらせる。
「ごめんなさいっ。私っ……あの……っ、じゃぁ……これで………。」
焦りながらその場から逃げようとする、桜花の腕を掴む。
「………っ!?」
力任せに引っ張って、その唇を奪った。
離れた唇………
目を丸くする桜花………
「こんなんも、あんたにとっては浮気なんですか~?」
桜花の顎を指で持ち上げて、無理やり目線を合わせる。
「っっっっ!!パンッ
桜花は目に涙を溜めながら、小さく震えていた。
「あ~ぁ、俺、顔が命なのに………。」
叩かれた頬を抑え鈍く笑いながら、桜花を見下す。
二人の足元には、叩いた拍子に散らばった
桜花の鞄の中身が散乱していた。
その鞄を掴んで、桜花は走って行った。
イライラすんだよ………
汚れた世界………知らない様な顔して…………
続く→
作品名:Happy Suggestion 作家名:雄麒