Another Dream Another Story
第八夜 監視という名の逢引
それから俺は時間を見つけては、彼女に会いに行った。
まるで……あの時の様に……
自然と足が部屋に向かう。
部屋の中に入って、特に何をする訳でも無かったが……
時間があれば、そこへ向かっていた。
変わらぬ彼女……
動かない表情……
「波穏……?」
そして……
偶の呼びかけ………
俺の呼びかけに少しの反応も示さない。
そう……
本当に人形に話し掛けている様な気分。
そんなある日………
いつもの様に、彼女の部屋で仕事をしていた俺の耳に
微かな声が聞こえた。
もちろんこの部屋には、俺と彼女しかいないはず…
「………?波穏?」
ゆっくりと彼女に近づく。
彼女の目が俺の姿を一瞬捉えて、再び色を失くした。
「波穏っ!?」
大声で叫んでも、彼女の瞳に色が戻る気配は無かった。
いつまでこんな事を続けているんだろう?
彼女が目を覚ます事はあるのだろうか?
続く→
作品名:Another Dream Another Story 作家名:雄麒