Another Dream Another Story
第七夜 ドール
気の狂う様な数の雑務をこなしている俺の元に、一件の仕事が来る。
牢屋の様な重い扉を開いて、真っ白なローブを羽織った奴が入ってくる。
「キール・シュライ。あなたには今日から、ある魂の監視をして頂きたい。」
相変わらず鼻に付く様な物言いで、そう告げたのは上からの使者。
「罪人か?」
監視と言うからには、そうなのだろう。
「収容ナンバー4276『カーム』。ランク[BS]
罪名は(自主的投命)」
書類の様な物を、淡々とした口調で読み上げていく。
(あぁ……この間、噂になっていた奴か………)
自主的投命……ということは……自殺か……?
その割には…ランクが[BS]?
自殺者は問答無用で[S]ランクのはずだが……?
不思議に思いながらも、書類と鍵を受け取って部屋に向かった。
鍵を開けて、ゆっくりと重い扉を開く。
部屋の中には中央に椅子が一つあるだけで、他には何も無い。
「…………………っ!?」
そして…その椅子に座っている少女を見て、唖然とする。
「……は……おん……?」
椅子に座っているのは、紛れも無く俺と契約をしたあの少女……。
唯一違うのは、腰まで伸びていた髪がバッサリ無くなっている事……。
「何故……ここに?」
そう問いかけて、俺は気付く。
目の前に座る彼女は、瞬き一つせず……
虚ろな瞳で一点を見つめていた。
まるで魂の無い人形の様………。
その時……俺の脳裏に穏やかに笑う彼女の笑顔が広がって……
再び涙が溢れ出た………
続く→
作品名:Another Dream Another Story 作家名:雄麒