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Another Dream Another Story

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第三夜 ぬくもり


約束の日まで……あと三週間……

あの夜も彼女に変わった様子は無かった。

いつもと違ったのは
俺との会話中に、彼女の母親が部屋に入ってきた事……

俺を見て焦る彼女……
しかし俺の姿は、契約者にしか見えない。
それに気付いた彼女が、笑顔で母親を送り出した。

母親の様子を見て、彼女が大切にされているのが
手に取るようにわかる。
では何故彼女にあの様な『ノルマ』が課せられたのだろう?
今の時点でクリアしている様に見える。
だが……彼女の首筋には刻印が刻まれたままで……
確実に『その日』は近づいてきていた。

その後……彼女が「海に行きたい」と言った。

彼女のデータの中にあった、唯一の楽しい記憶……
それとは対照の海にいきたいと言った彼女の考えはわからなかったが
俺に出来る事はしてやりたかった。

彼女を抱えて羽根を広げる。
思っていた通り細く軽い彼女を抱えて、
海に辿り着くのに、たいして時間はかからなかった。



彼女と並んで、海を見る。

ポツリポツリと、話し出した彼女の過去。

俺は何も言わず、話を聞いていた。

「私……何で……生きているんだろう……?」
そう言った彼女に、俺はやっと気付く。
彼女は『生きる意味』を知らないんだと………

「………っ……ちょっと……少しで……いいから……肩……貸してね…。」
途切れ途切れにそう言って、俺の肩に頭を乗せた。

俺は頭で考えるより先に手が動いた。
身体と同様の、小さい頭をそっと撫でてやる。

彼女の長い髪が風に揺れて……
温もりの無い俺の手が、彼女に触れた箇所から
熱を帯びていく気がした………

人間というものは………こんなに暖かいものなのか………?

続く→

作品名:Another Dream Another Story 作家名:雄麒