Another Dream Another Story
第二夜 変化
今まで俺と契約をした人間は、生きる為に必死だった。
中には信じられない様な手を使ってまで
生きながらえ様とする奴だっていた………
そんな人間ばかりだった………
それなのに……
それなのに……あの少女は………
ゆっくりと契約の日を待っていた………
今までに無いタイプの人間に最初は戸惑いもあったが……
これなら、ターゲットに変わった動きが無いかの
定期監視も楽だな……と思った。
俺達には、契約を結んでから契約の日までの間
ターゲットを見張る役目もある。
プレッシャーに負けて、自ら命を絶たない様に……
周りの人間に害を与えない様に………
最低でも一週間に一度は下界に下りる。
彼女と契約をしてからも、いつも通りに
一週間に一度は、彼女を訪ねた。
彼女の元に来るようになって、四度目位だったろうか……?
俺は前の仕事が長引いて、遅めの訪問………
深夜二時を越えていたにも関わらず
彼女は眠れないと言って起きていた。
その日は契約をして一ヶ月……
約束の日は迫っているのに……
彼女に何の変化も無い……
いつも俺の訪問に、笑顔を向ける彼女がその日溢した一言……
「私… … …変われないと思う… … …
だって… …話す相手もいないのよ… …。」
そう言った彼女の瞳が小さく揺れた。
「これから毎日来る。」
自分が何故そう言ったのかはわからない………
だけど……その時はそうしたかった。
俺が毎日来た所で、何も変わらないだろう。
もちろん毎日行く必要も無かった。
しかし……何故か自然に足が向いてしまうのだ………
それから毎日彼女の元へ足を運んだ……
昼間外に出られなくなった彼女……
必然的に夜の訪問が増える。
彼女はろくに睡眠をとっていないくせに……
『眠れない』と言う……
俺の後ろで何度も寝返りを打つ彼女に
俺の仕事の事を話した。
他の誰かに話せる様な仕事じゃない事位わかっている……
俺自身も背中にある黒い羽根を疎ましく思う……
何度切り落としてやろうと思った事か……
強い興味では無かったが、俺の話に聞き入っていた彼女が
「私も… … …死んだら… …ライみたいになれる?」
と聞いてきた。
見るからに純粋そうな瞳の彼女……
汚れを知らない彼女の手………
俺の様には……なってほしくなかった………
その時……何故かそう思った………
続く→
作品名:Another Dream Another Story 作家名:雄麒