Another Dream Another Story
第一夜 First Target
今まで何百・何千という数の人間を請け負った。
俺の仕事は死んだ人間を、人間達の言葉でいう『あの世』へ導く事…
人間達が迷わない様に道案内をする事……
そう言えば聞こえは良いが、そんなに良心的な仕事ばかりでは無い。
上からの命令や、クライアントからの依頼があれば、
ターゲットの命をその場で終わらせる事も出来る。
しかし無理に奪う事は、奪われる側にしてみれば
納得のいかない事だ。
そこで我々は『契約』という形を執っている。
ターゲットと『契約』を交わし、
『契約』の内容が守れれば、俺の仕事は失敗………
逆に守れなければ、ターゲットは命を失う…………
命を天秤にかける『契約』なのだから、
簡単にクリア出来る様な内容では無い。
『契約』内容は人それぞれ異なっているが……
ターゲットにとって、安易な事では無いのだろう。
殆どのターゲットが、守れないのだから………
どんな状況であれ『契約』が守れなければ、有無を言わさず『あちら』行きだ。
そうなると……昨日までピンピンしていた人間が
次の日には還らぬ人となる。
この場合は………大抵事故と判断されるが………
たまに…あまりにも不可解な点が多すぎて、
事故と判断しにくいものが出てくる。
それらの大半は、俺達が手をかけている事が多い。
だからと言って、人間では無い俺達が裁かれる様な事は無く……
ターゲット以外の人間には姿が見えないのだから
事件が迷宮入りする程度だ………
俺は自ら手を下す事に、何かを感じることは無い。
俺達の中には、それを嫌う奴らもいるが………
俺にとっては当たり前の事で………
ターゲットがどんなに泣き叫んでも………
表情一つ変えずにその命を奪ってきた………
それが……普通だった………
人間というのは……俺達と違って………
脆く…………儚い……………
短い命を……すぐに消えてしまう命の炎を大切に扱う。
俺はその炎を、躊躇いも無く吹き消す。
何て……簡単なのだろう………
こういった仕事を引き受けない奴らは
真っ白な羽を纏い……純粋な瞳………
そんな奇麗事ばかりの連中も、山ほどいる。
だけど…俺にとってはどうでもよかった………
そんな奴ら…どの人間が死のうが、生きようが……
俺には関係の無い事だ。
その所為か俺は裏での仕事が、年々増えて行った。
お陰で背中の羽根は真っ黒に染まった。
自ら手をかける事だって……何食わぬ顔で出来た………
それなのに………
一人………たった一人………
小さな少女が……彼女が俺を変えてしまった………
続く→
作品名:Another Dream Another Story 作家名:雄麒