Another Dream
第8夜 カウントダウン
約束の日まで…後一週間………
この間の定期健診の時に、ついに入院を勧められた。
最初は断っていたのだが、もしもの時にすぐ対応できる様にと
半ば無理やり入院が決まった。
病棟の端の部屋……
真っ白なシーツ…
真っ白な部屋…
その中にライの立つ姿を想像して笑う。
(何て…綺麗なんだろう?)
真っ白の世界に広げたライの漆黒の羽…
夜が待ち遠しく感じる。
消灯時間が来て、ベッドに横になる。
窓から微かに聞こえて、体を起こした。
聞き間違えるはずの無い、ライの羽の音。
「起きていて平気なのか?」
ゆっくりと部屋に入って、波穏に近づく。
「全然平気。後一週間なんて、嘘みたいにピンピンしてる。」
ライに笑顔を向ける波穏。
この時既に波穏の右手の感覚は無く…
腕を上げる力すら残っていなかった。
「そうか…。」
いつも笑顔など無いライの表情が、何時に増しても暗く感じる。
「ライ?何かあった…?」
疑問に思った波穏が問いかける。
「何故だ?」
そう言った顔はいつもの表情に戻っていた。
「えっと…、何か…辛そうだったから……。」
「辛そう…?」
ライが眉間に皺を寄せた。
「我々は人間の様な感情など持ち合わせていない。
人間を欺くために笑顔は作れるが、
本来は人を殺すことですら苦にならないのだ。」
早口で言ったライの言葉が、いつもより強く感じる。
まるで、自分自身が否定しているかの様に…………
続く→
作品名:Another Dream 作家名:雄麒