Another Dream
第9夜 運命
ライを送り出して、眠りにつく。
意識がすぅっと遠のいて行って、いつもの夢の中にいる感覚。
相変わらず真っ暗で…
でもちゃんと自分の体がある感覚…
何かに座っていて…
呆然と一点を見つめる…
見つめる先に何かの気配を感じて、一瞬身体が強張る。
近づいてきたヒトの顔がよく見えない…
不思議と怖さが無くなって…
必死に声を出そうと頑張るが…
声にはならず…
「…………ぃ。…いっ。おいっ!」
ゆっくり瞳を開けると、先程帰ったはずのライの顔…。
「…ラ…イ?」
体を起こすと頬がひやりとした。
涙を流していた自分に驚く。
「今ならまだ間に合う。何とか出来ないのか?」
少し焦った様なライの顔…
初めて見る顔…
「私の体のことは、私が一番わかってる…
でもね…………怖くは無いの……………。」
柔らかく微笑む波穏。
「それで…いいのか?」
初めてライと真正面から向き合った気がした。
「これが… …私の運命ならば………。」
そう笑う波穏の顔は、どんな時よりも穏やかで…
「…………………わかった。」
すっと立ち上がったライの顔から、表情が消える。
ライの羽音を遠くに聞きながら
波穏は再び眠りに堕ちていった…………………
続く→
作品名:Another Dream 作家名:雄麒