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Another Dream

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第4夜 選べぬ道


あの日…おぼつか無い足取りで、やっとの思いで家に辿り着いた。

時間が経てば経つほど、夢だったのでは無いか…?
と疑いたくなる。


しかし鏡の前に立って、首元に残る小さな痣を見つけて、やっぱり夢じゃなかったと実感するのだ。



それにライと名乗った(そう呼べと言われた)男は、あの日から
一週間おきに波穏の元にやって来た。

あの日と同じ様に、人間の格好をしている時もあれば…
真夜中に羽を出したままで来る事もあった。


それ以外は何も変わらぬ日常…

ライが来る事以外で変わった事と言えば…
例の夢… … …

今まで不確かだった自分の体が、その場に『ある』と感じる様になった。
『手を握る』と脳で考えれば、指が動く感覚。

それと同時に背中が疼く… …
くすぐったい様な… 少し痛い様な… …変な感覚。







今日でライと会ってから1ヶ月が経つ…。

(これで自分の人生は後…1ヶ月か… …。)
なんて自分なりにカウントダウン。



その夜はやけに寝付けなくて、電気を消したままベッドの上で呆然としていた。


「… … … …!?」
ライ特有の羽音が聞こえて、窓を振り返る。

「まだ起きているのか?」
ベッドに歩み寄りながら、羽が消える。
「うん。何か眠れなくて…。」
「変わりは無いか?」

ライと話をしているとたまに、こちらの話を聞いていないのではないか?
と思う事があるが、それも慣れた。

「う~ん。特に変わった事は無いかなぁ?」
少し考える振りをするものの、即答出来る位毎日は変わらなかった。

「もう1ヶ月だぞ。」
「そうだね…。」
思い沈黙が夜の闇に溶けていく。



「私… … …変われないと思う… … …
だって… …話す相手もいないのよ… …。」
少し自嘲気味に笑う波穏。
普段バイトをしているといっても、週に1・2回。
人と接する様な仕事では無い為、必要最低限の言葉で済む。


「もう… …寝ろ。」
ライを見ると背中を向けて、窓に向かっていった。
「おやすみ…。」
波穏の呟きの後に、漆黒の羽が音を立てて広がる。



「これから毎日来る。」
ライは背中を向けたままそう告げた。
「えっ!?」
驚いてその背中を見つめる。

「勘違いするな。俺はお前を監視する役目だ。」
それだけ言って、窓から姿を消した。
「そっか…。」
小さく呟いて、俯く。



ライの羽音が聞こえなくなった部屋で、波穏がもらした一言…。

「それでも… …嬉しいよ… …。」

その言葉はライに届く事は無く… … …

波穏自身もどうしてそう思うのかは、わからぬままだった… …


続く→

作品名:Another Dream 作家名:雄麒