Another Dream
第2夜 見知らぬ男
今日もいつもの様に、病院に行って…
意味の無いような問診を受けて、家に帰ってくる。
自分の家に帰るための電車をホームでぼーっと待つ。
目の前に電車が止まって、降りてくる人の波を虚ろな目で見続ける。
この電車に乗らなければ…そう思うのに足が動かない…
降りてくる人が怪訝な顔で、波穏を避けて行く。
視界が一瞬暗くなって、目の前に誰かが立ち止まっているのに気付く。
ゆっくりと顔を上げると、すらっと背の高い男が立っていた。
真っ黒い髪に真っ黒いスーツ。
全身が黒で覆われているせいもあって、肌の色がやけに白く見える。
見た感じ25・6歳位だろうか?
何も言わずに立ち続けている男の後ろで、電車がホームから離れていくのが見えた。
(あぁ~、行っちゃった…。)
小さくため息をついて、再び男に目を向ける。
「あの…何か?」
波穏の問いに、その男は何も言わずに微笑んだ。
その笑顔に背筋がゾクッとする。
笑顔を向けられているはずなのに、全身が萎縮してしまう。
冷たく見下す様な笑顔…。
それなのに相変わらず足は動かなくて…
目の前の男を見ている事しか出来ない。
「初めまして。篠崎波穏さん。」
やっと発した言葉に驚く。
「えっ!?」
目を丸くする波穏に、先程と変わらない笑顔の男…。
つい先刻まで人で溢れていたホームが
整然としていて、人の気配が全くしなくなっていた…。
続く→
作品名:Another Dream 作家名:雄麒