Another Dream
第1夜 夢の中…
夢… … …
眠っている間に見る夢… … …
楽しい夢…
嬉しい夢…
悲しい夢…
そして怖い夢… …
多くの人が毎夜いろいろな夢を見る。
しかしここにいる、この話の主人公『篠崎 波穏(しのざき はおん)』は違った。
(うわぁ…、また真っ暗だ…)
目を閉じて眠りに入っても、視界の色は変わらない。
それが『夢である事』を理解出来るのに、延々と同じ光景が続く…
周りに人の気配は無く…。
ただひたすら続いている暗闇。
暗闇が続いていると『見ている』自分ですら、ここにいるのか…存在しているのかもわからない。
ただ…目と思われるもので見ている光景は、果てしなく続く闇なのだ。
いつからこの夢を見始めたのかはわからないが
物心付いた時から、ずっと見続けている。
最初は他の人の夢もこんな物なのかと思っていたが、ある日…
『昨日夢の中で○○ちゃんと遊びに行った~。』
と楽しそうに話す人を見て、不思議に思った。
それから傍にいた大人に聞いてみたが、期待した答えは返って来なかった。
どうして自分だけ毎晩同じ夢を見るのだろう?
小さい頃から病弱だった波穏は、外に出ることもままならず
病床の日々…。
もちろん友達と呼べるような人もおらず
学校に行っても、入退院を繰り返していた。
そんな波穏の唯一の心の支えだった母が、一度だけこぼした言葉。
『何で私ばっかり…。生むんじゃなかった…。』
看病疲れだったと、今になればわかる様な気がするが…
幼い頃に聞いたその言葉は今でも『トラウマ』になっている。
自分でもたまに『生きてて何の意味があるんだろう?』と思うことがある。
二十歳になった今でも、通院しながらやっとの思いでバイトをしている。
人に言われなくても『自分の人生はつまらないもの』だと思う。
それだったら… …せめて…夢くらいは楽しく見させてくれてもいいじゃないか…?
今の自分を丸写しにした様な夢…。
この夢に何か意味があるのだろうか…?
続く→
作品名:Another Dream 作家名:雄麒