失格ママの子育て
てあるね?)(うん、大丈夫。お留守番するって、約束したもんねえ、
タックン。)(うん)、3人で改札口へ、(じゃあ行くね。)と手を
振ると、〔バイバイ〕手を振り終えて、急に背を向け、お祖母ちゃんの
膝にしがみつく。我慢している気持ちが痛いほどわかるが、心を鬼にし
て新幹線に乗り込む、気持ちを切り替えなきゃ。最後の公演は、明石な
ので新大阪で待ち合わせだ。改札口に向かうとコロコロ太った子供が、
改札口を通り力一杯走ってくる。〔何処の子かしら、ひとちがいして〕
と思い身をかわす。一メータで、とまって私を見る。驚いたような悲し
そうな目で、見てる。恐る恐る〔タ、タックン?〕大きくうなずく子供
(ほんとうにタックンね。)一段と大きくうなずく。(ごめーん、お兄
ちゃんになって、わからなかった)手を広げると、飛び込んできた。
〔香代子、それでもお母さんなの!自分の子が判らないなんて。太郎が
どんな気持ちで、あんたをまっていたとおもっているの!〕改札の向こ
うで、大声で叫ぶ母の声。改札口を出て、歩く間、母の小言は続く。
タックン〔おばあちゃん、母ちゃんお仕事なの。〕と仲裁に入る。
小言で小さくなっている失格ママを守ろうとしてくれる三歳の息子の姿
に感動し、この子を、私に授けてくれた神に感謝。
第10章 僕を預けないで
劇団の学校巡演を、タックン三歳の秋よりパスが不可能な劇団の事情で
一緒に始める。学校公演の仕込み中は生徒さんと遊び、公演中は、先生
の膝の上、バラシの時間は用務員の人のお世話になり、公演時期は一緒
のため全部の台詞を覚え、トチルと終了後、〇の人間違えたよ、など報
告に来たりで協力的だし、年齢のわりには良く聞き分けてくれた。
しかし、ホール公演は、道具作りや衣装作り稽古と夜中までの仕事、
また、おばあちゃん家でお留守番。今回は、元気に笑顔で別れた。もう
少しの辛抱だなと思いつつ仕事を終え、何時ものようにお迎え、又胸に
飛び込んでくるだろうな、と期待しながら、玄関の戸を開けると、畳に
正座しているタックンの姿(えっ?)タックンの声〔母ちゃん、タック
ンを預けないで、タックン一人でお留守番できる,ご飯も作るから。〕
(どうしたの?)〔お願い、預けないで。預けるならお仕事止めてお願
い!〕両手を突いて頭を下げる。隣で、豆鉄砲を食らった顔の母の顔。
そして涙を浮かべて「四歳の子にこんなことを言わせなんて!太郎は今
まで我慢してたんだよ。可愛そうに、お前ももう少し子の気持ちを考え
て、貴女は母親なんだよ。〕と涙声で諭される。〔タックン、解った。
母さんもいい方法を考えてみるね〕(うん。)その晩は実家に泊まり、
翌日新幹線へ。帰宅に向かいながら、心は迷う。次の劇団の集合日、
主宰者に〔子供が精神が不安定なので、少し休ませてください。〕と
願い出る。三ヶ月の間に結論を出そうと決心する。そろそろ1ヶ月もう
すぐ五歳だ、保育園から帰り、食事の支度をしている私に〔母ちゃん〕
(なーに)(あのね母ちゃんお仕事していいよ、タックン大きくなった
から、大丈夫だよ。)(エッ? お芝居のお仕事していいの?)(うん
いいよ。)タックンの許可が出た。そこで、旅公演のない鬼の演の創立
に参加し、劇団を変えた。
第11章 失格ママから、一歩前進!
私は、よく知人に〔母親の役目は3歳までで、八〇%終わりだと思うよ,
潜在意識の感受性、基本的人間性は出来あがる]なんて生意気なことを
言っていたが、失格ママを母親として育ててくれるのは、なんと子供な
のです。 タックン六歳小学生になって、失格ママから、一歩前進!と
おもうころ、タックンの妹花子の誕生で、今度は母親になるための修行
の歴史の始まり始まり。 オギャアの声は? 我が子?
〔おかあちゃん、花子が泣いてるよ。〕学校から帰たタックンが、
ベランダで下にいる私を呼ぶ。急いで戻ると、〔こんなに大きな声で泣
いてるのに、きこえないの?〕(ごめんね。生まれたとき、花子ちゃん
泣かなかったから、花ちゃんの声が判らないんだ。)〔僕のときは?〕
〔タックンは、すごく大きな声で泣いたから、どんなに離れていても、
すぐ判ったんだ。〕(ふーん。)そうなんです。花子は逆子で生まれ、
分娩室でお医者さんが、汚物を吸いだしたとき(きゅ、きゅう。)と
ないて保育器に入れられ、退院まで抱くことも出来なかったのです。
人間って不思議ですねえ、出産時の産声を聞けなたら、一ヶ月近く
経ってるのに、我が子の泣き声が、聞き分けられないのです。 でも、
もしかして、これって私だけのこと? 似た経験の他の人たちって、
どうなんだろう。聴いてみてたい気もします。
第12章 大事件?花子三ヶ月、母オタオタの巻き
花子が熱を出したので、仕事はお休み。太郎は学校へ。娘は、1ヶ月半
ぐらいに、軽いひきつけを起こしたことがあるため目が離せない。洗濯
を終えて花子の様子を見ると、なんだか様子がおかしい。そのうち小さ
な握りこぶしを結んだ両手を上に上げたと思うと、バンバン布団を叩き
ギュウと身体をひねると、黒目が上瞼の中に引き上げられ白目だけにな
った。慌てて一一九に電話五回なる呼び出し音、(出ない)娘を抱えて
走りる。隣の棟の三階から〔奥さんどうしたの?〕〔子供がひきつけ
て〕〔ダメよ。今救急車をよぶから、そこにいて、〕そしてその人が布
を巻いたスプーン渡し〔すぐ来るから、これを口の中に入れて、舌をか
んだら大変だから〕そこへ救急車が来てかかりつけの病院へ、救急車の
中で、涙が止まらない、心臓をギュウと捕まれたみたいで痛い。
〔お母さん、大丈夫だから、しっかりして!〕と救急隊員の人。病院に
着くとすぐ診察室に。(どうしたの?頭でも打ったの?)涙でくちゃく
ちゃ顔の私を見て、待合室の患者さん。(いえ、ひきつけて)〔大丈夫
だよ、初めてでびっくりしたのね。〕診察室に入ると、花子は意識を取
り戻してた。お医者さん〔もう大丈夫だよ。心配な気持ちもわかるが、
もう少ししっかりしなくちゃ、お母さんなのだから〕。皆さんにお礼を
言って〔お大事にね。〕の言葉に送られて家に向う。しっかり花子を抱
えながら、こんなにみっともない自分に、あきれ恥ずかしかった。
こんなにオタオタしてて、何時しっかりした母になれるのでしょう~。
第13章 タックンのときは?
タックンが初めて熱を出したのは、生後一ヶ月の日曜日。風邪で三九度
強の熱が引かない。心配なので出産した病院に連れて行く。その病院は
救急医院なので、診てもらえるから。担当が小児科の先生でなく(とに
かく今日は熱を下げる注射しとこう。)太い注射器の針が、タックンの
お尻にブッスと刺された瞬間〔ギャア〕と大声で泣き始めた。かたわら
で私も涙ポロポロ、一緒に泣いた。お医者さん、少しあきれた様子で