失格ママの子育て
マの姿。頼りない姿でした。
第5章 二度目の迷子
もうすぐ三歳、週一回のバレエ、子供指導に、新小岩の稽古場に行った
場所で、(タックン、遊んでくる。)と、何時ものように、レッスン場
の社務所から出かけていった。いつもなら、レッスンが終わる時間に、
時計を持ってるかのように、帰ってくる息子が来ない。待つこと十五分
仕方がないので、近所を (タックーん、タックーン)大声で呼びなが
ら歩く。一回りしても返事がない。社務所の人に言われて、警察署に
電話する。(もしもし、警察ですか?子供が迷子になったようで、近所
に見当たらないのです)(アア、もしかしたら、今、パトーカーで来た
子じゃないかなお子さん、どんな服装してますか?)ドッキンコ!思い
出せない、(すみませんが、電話に出していただけますか?)子供の声
(もしもし)(タックン、太郎君、本当に太郎君?)(うん)(わかっ
た、すぐ迎えに行くからお巡りさんと代わって、うちの子に間違いあり
ません。すぐ行きます。十五分か二十分には着けると思いますから。)
(わかりました。 なるべく早く来てあげてください。)電話を切って
お礼をいい、大通りに向かいながら、財布の中をチエック、なんとかタ
クシー代がある。 タクシーを走らせ警察署に、机の上に乗って、四人
のお巡りさん相手に手ピストルで(パン、パン)手ピストルを向けられ
たお巡りさん(うーんやられたー)と遊んでいる息子が居た。(すみま
せん)の声で、(たっくん、お母さん来た。よかったねえ)タックン、
嬉しそうに(お巡りさんにらーめん貰った!)(すみません)と恐縮。
(近所の奥さんが、公園で水浸しで遊んでるのを見て、心配して連絡し
てきたんだよ。自分のお子さんの服も下さって。)その方の住所とお名
前を聞いって、駅まで歩く。失格ママは、こうして助けていただきなが
ら子育てなのです。 優しいお巡りさん、奥さん、アリガトウ。
第6章 三度目の迷子
タックン四歳の春、飛鳥山の子供の遊具のある広場へ、いつもは私の居
場を決めてから、私の傍を離れるタックンが、それをしないままにジャ
ングル滑り台へ走る、慌てて呼び止めたが、間にあわない。目で我が子
を探すが、多くの子供達で見当たらない。(そんなばかな!)とぐるぐ
る三回周囲を回われど、わからない。名前を呼べど返事がない。砂場の
ほうか? ブランコのほうか? 行ったり来たり三十分ぐらい経っただ
ろうか、(太郎君のお母さん、お子さんが、下の交番で待っています、
この放送を聞かれましたらこちらにおいでください)〔エッうそォ!〕
と思いつつ交番へ。着いてみるとお巡りさんからいただいた焼きそばパ
ンを、美味しそうにほおばっている太郎の姿. お巡りさん曰く〔お母
さんですね。しっかりしてるよ息子さん。お母さんが迷子になったから
探して欲しいって来たんだ。住所も電話番号から、お父さんお母さんの
名前もちゃんと言えたよ。お母さんしっかりしなきゃ、息子さんに負け
てるよ。〕おっしゃる通りかも知れないけど、迷子は子供のほうだよ。
と心の中で頬をふくらませる失格ママでした。でも、お巡りさんって優
しいいい人ですねえ.
第7章 四度目の迷子
タックン、五歳の春、新宿の劇団での稽古中〔何時もの公園で遊んでく
る。〕(遅くならないで)(うん)稽古の休憩時間、近くの公園に様子
を見に行く。ドッキンいない!(またか、一年毎じゃない。今日は絶対
許さないぞ。)と決めて、近くの交番へ迷子届け。見つかったら劇団へ
連絡してもらうことにして稽古場に戻る。〔どうしたの?そんなかおを
して〕と、仲間に聞かれる。きっと顔付きが変わっていたのだろう。
そこへ交番から連絡、隣の区域の交番にいるとの事。慌てて劇団を出
る。 後から若い仲間2人が、追いかけてきて、(疲れてるだろうか
ら、僕達行くからこの辺で待ってなよ。)そして2人は駆け出していっ
た。仲間に迷惑かけることになった。待つこと三十分、タックン、仲間
の一人に肩車され、意気揚々と帰ってくる姿を見たとたん、涙が止まら
ず座り込んでしまった。仲間が近づくと、(このまま、劇団につれて帰
るから、後からゆっくり帰っておいでよ。)もう一人の仲間が、泣きな
がらふらついている私を抱えるように支えて歩く。( 男の人の胸って、
こんなに温かいんだ)と涙の中で感動した。(今日は君の出番の稽古は
終わりにするから、タックンとはやくかえりなさい)皆の優しい言葉。
一人の仲間〔今日、檀ちゃんの母の顔を、始めてみたよ。やっぱり、本
当にお母さんなんだなあって、嬉しかったよ。〕などいわれ、言葉に甘
えて帰宅する。結局叱ることも出来なかった。それ以来、近所の人に私
のことを、(母さん、僕が居なくちゃ、だめになる人なの、大事にして
あげなきゃ、いけない人なの)といっそうで、迷子事件のたびに見せた
私の態度が、タックンに僕がしっかりしなくてはとおもわせたらしい。
この事件が,タックンの迷子最終歴になった。失格ママは時にはいいか
も。
第8章 初めてのお泊り
二歳半の夏、劇団のホール公演参加のため、初めて広島の母に預ける。
予定は一ヶ月実家で寝かしつけて、その夜広島を発つ。無事公演終了。
実家の玄関を入ると、小さな体が胸に飛び込む。〔良い子にしてた?〕
(いい子だったよ。)母が替わりに返事する。座敷に上がり抱いたま
ま座って、十五分。安心した様に、膝から離れ、一人遊びはじめる。
(なかなかった?)と母に聞くと〔貴女が出発した後。朝方の五時ごろ
目を覚まして泣いたわよ。背負って表に出て、ちょうど朝。出勤する人
が居たので、お母さんは、あのおじさんたちのように、朝早くお仕事に
行って、皆がねんねする頃に帰るので、タックン一人に出来ないから、
おばあちゃん家へ預けたのよ。お仕事が終わったら、電話が来て、お母
さんがお迎えに来るから、いい子で待っていようねって話したら、
それ以後、お母さんのおの字も言わなかったよ。電話が鳴るたんびに、
電話の傍へ走っていくんだもの、不憫で、不憫で、子供を犠牲にして、
やらなければならないの!あなたは母親でしょう!〕強い口調で小言
をいう。〔この子を産むとき、抱き込んで生きると、仕事は捨てない
と決めて生んだんだもの。〕〔それはあんたの我儘でしょう。子が可
哀想と思わないの?それでも母親?あんたのきもちわからない。〕と、
いよいよご立腹。失格ママかもしれないけど、タックンはわかって
くれるよね。〔おばあちゃんに怒られちゃった〕タックン(おしごと
だから、いいよ。)ママを受け止めてくれるタックンに、感謝。
第9章 お母ちゃん、タックンを忘れたの?
3歳、今度もおばあちゃん家で、お留守番のため、おばあちゃんと新大
阪駅で、待ち合わせ。三人で駅のレストランで食事。母(ちゃんと話し